研究課題
現在、半導体の技術進展による放射線検出器回路の小型化(100μm角程度にADCを搭載可能)と、高エネルギー実験や宇宙線実験での大型検出器の要請(1m2以上)をつなぐ為の技術的ブレークスルーが必要とされている。単純に半導体を並べる手法では、コストが大型実験に対する制限となる。本研究は、我々の特許技術「ビルドアップ法」によって、半導体上に大型ガス検出器の読み出しパターンを実装する手法を確立することを目的とする。具体的には、検出面積を半導体の10倍に拡大した基板を製作、ガス検出器の読み出しシステムとして機能することを実証する。上記システムのを具体的に実現する方法として、ディスペンサーによる描画、スクリーン印刷による電極形成、低温焼結セラミック基板をバンプボンディングによって半導体に接合する手法がある。平成23年度の研究では上記3手法による検出器電極形成の基礎試験及び、試験結果が良好なものな手法に関しては電極形成を行った。ディスペンサーを用いた手法は、再現性の確保が最重要開発課題であるため、当初の予定よりも太い線幅による再現性高い描画を追及、0.3mmの線幅で安定描画可能なパラメータを得た。今後、細いノズルを用いた条件出しを行い、当初予定の100μm線幅での描画、検出器構造形成を行う。スクリーン印刷法では、50μm線幅の細線を描画可能であることを確認した。さらに、導体ペーストと絶縁体ペーストを重ねて塗布可能であることを確認した。今後、重ね塗りの際の相互の位置関係の微調整精度を向上させることで、検出器製作へと発展させる。低温焼結セラミックを用いた方法では、 直径130μmの電極を200μm間隔で形成した。これまで問題となっていた基板のそりも基板の構造を単純化することによって1/4以下に低減した。今後、バンプボンディングを用いて半導体に実装、ガス検出器として試験予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究では100μmの線幅での描画、検出器構造形成を予定していた。平成23年度に試験を行った3手法のうち2手法(スクリーン印刷法、低温焼結セラミック法)で予定線幅を達成した。残りの1手法(ディスペンサー)に関しても、線幅は300μmと当初予定よりは太いものの再現性の高い描画条件が得られたため、おおむね順調に進展していると判断できる。
ディスペンサーおよびスクリーン印刷を用いた検出器電極構造形成、低温焼結セラミック法によって製作した基板の実装を行い、3通りの手法によって実装したガス検出器としての性能評価を行い、当初計画を達成する。
ディスペンサー、スクリーン印刷用の電極材料、低温焼結セラミック基板の実装、性能評価実験のための旅費に使用予定である。
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Proceedings of "CYGNUS 2011 : 3rd Workshop on directional detection of Dark Matter" EAS publication Series
巻: 53 ページ: 33-41