本研究はチェレンコフ光を利用して電磁カロリーメータの時間分解能を100ps以下にするための挑戦的な研究である。従来の電磁カロリーメータはシンチレーション光のみを利用して、発光量が微弱なチェレンコフ光は無視している。しかし、即発のチェレンコフ光を検出することが出来れば時間分解能は大幅に向上することが可能となる。今年度の研究として、(1)低エネルギー放射線源を利用したPETなどの医療に応用するための基礎研究、(2)素粒子物理研究のための、高エネルギー電子線を利用した超高時間分解能の達成、と分けることが出来る。前者は大阪大学核物理研究センターで、後者はカナダのTRIUMF研究所にて研究が実施された。TRIUMF研究所M11実験室を用いて、250MeV/cの電子ビームを鉛ガラスに照射することで、時間分解能を直接測定する。鉛ガラスはシンチレーション光りを放出せず、チェレンコフ光のみを生成するので、本研究の測定原理を実証するためには非常に好都合である。結果として、高エネルギービームを用いた場合は80psの時間分解能が達成出来た。一方、低エネルギー放射線源での実験でも、120psまで分解能が向上できていて十分な性能が得られている。今後はシンチレーション光とチェレンコフ光が共存するガンマ線検出器において、エネルギーをシンチレーション光で、時間をチェレンコフ光で決定するための更なる技術の進化が期待できる。
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