液体シンチレータの発光量を測定する装置の設計・製作を行い、水を主成分とした液体シンチレータの開発を進めた。液体シンチレータをバイアル管に封入し、それに密着させた光電子増倍管にて捉えた光量をアナログデジタル変換してパーソナルコンピュータで取 り込む装置を製作し、且つ発光量解析プログラムを作成した。発光源とし60Co(1.17MeVと1.33MeVのγ線)を用い、γ線が起こしたコンプトン散乱の電子線の発光を測定するのであるが、その発光量(ADC値)の分布を取り、コンプトンエッジの存在を確認し、その コンプトンエッジ値で発光量を定義する。そして、その発光量(ADC値)を、光電子数 [pe]に変換して、発光量を評価する。この方法で、発光量が正しく測定できることをシミュレーションにて確認した。よく知られている有機物プソイドクメンを主成分とした試薬での発光量を測定し、316.6±2.5 [pe]であったので、この値を基準値として水を主成分とした液体シンチレータの開発を進めた。 開発は、主として ”開発1.界面活性剤を用いて発光剤(PPO)を水に溶かす”ことを行い、加えて、”開発2.安全が確認されている市販の純石けんを用いて発光剤(PPO)を水に溶かす”ことを行った。更に、”開発3.開発1の試薬にての経年変化(劣化)”を調べた。開発1では、70%水+30%ドデシル硫酸ナトリウム(界面活性剤)+ 30g/L PPO(発光剤)の液体シンチレータの発光量は、9.99±0.17 [pe]であった。これは、基準値の約1/30であり、更なる光量が必要である。開発2では、50%水+50%洗剤(石けん成分は35%)+30g/L PPO (発光剤)の液体シンチレータの発光量は、6.428±0.074[pe]であった。開発3では、開発1の試薬については、1年間での経年変化(劣化)は認められなかった。
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