研究課題/領域番号 |
23654091
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
志垣 賢太 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70354743)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 高強度磁場 / カイラル磁気効果 |
研究概要 |
本研究では、強い相互作用における CP 非保存の議論も含めて熱い注目を集める、高エネルギー原子核衝突反応における超高強度磁場生成の可能性に対して、直接生成光子の偏極測定による直接的検出を目的とする。熱的光子の探索において実光子測定以上に有効な手段と示された仮想光子測定に着目し、電子・陽電子対の角度分布非対称性により偏光測定を実現する。この新着想による強磁場生成の検証により、CP 非保存を含む理論模型の混沌状況に実験的知見を期待する。RHIC 加速器 PHENIX 実験における核子対あたり 200 GeV の原子核相互衝突反応の収集済データの評価を行い、当初想定した金原子核相互衝突に代えて銅原子核相互衝突を主たる解析対象に選択した。同事象について、電子・陽電子対検出による仮想光子測定を発展展開し、電子と陽電子の角度分布非対称性による仮想光子の偏極決定への準備を推進中である。一方、理論的側面から、生成する磁場の強度、衝突エネルギーおよび中心度への依存性、時間発展、生成機構などについて考察を進めた。さらに、量子電磁力学に基づく計算により、直接生成光子の偏極度を中心とする複数の実験的信号について、理論期待値の定量的評価を開始した。実験的統計量と併せて検出実現性の評価を推進中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題で提案する挑戦的かつ萌芽的な測定に対する理論的期待値が計算の進展により明らかになりつつある。これにより、検出実現性の高い測定手段の明確化と選別が進行中である。同時に、当初想定した RHIC 加速器のエネルギー領域に加え、より高い LHC 加速器エネルギー領域についても計算を行い、同加速器 ALICE 実験における高強度磁場検出の可能性についても評価を進めている。より広範な測定により、高エネルギー原子核衝突反応における強磁場生成の直接的検出可能性が高まると期待する。学会や研究会における講演や議論などを通して、多くの理論研究者および実験研究者の注目を集めつつある。本研究課題の当初想定以上の発展までも、大いに期待される状況である。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に従い、RHIC 加速器 PHENIX 実験において原子核相互衝突からの直接生成仮想光子の偏極を、電子・陽電子対を用いて測定する。圧倒的多数の背景雑音成分を精度よく差引き、系統誤差を充分に抑え込んで物理議論を可能とする。反応軸を衝突事象毎に測定し、直接生成光子偏極測定との幾何学相関解析により、高強度磁場生成の有無を検証する。発展的展開として、LHC 加速器 ALICE 実験における同様の測定も視野に入れる。より広範な測定により強磁場生成の直接的検出可能性をさらに追求する。量子電磁力学に基づく計算による、実験的信号についての理論期待値の定量的評価も発展的に継続する。検出実現性評価に留まらず、信号検出時の物理解釈にも極めて有用である。
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次年度の研究費の使用計画 |
理論計算による実験的信号期待値評価の先行推進により、実験現地である米国ブルックヘブン国立研究所への滞在を当初計画よりも遅い時期に配した。中期の現地滞在による実データ解析の強力推進に必要な経費を平成 24 年度に計上する。
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