強い相互作用における CP 非保存とも関連するカイラル磁気効果の議論を含めて注目を集める、高エネルギー原子核衝突反応における高強度磁場生成に対して、直接生成光子の非等方性および偏光の測定による直接的検出を提唱した。特に、熱的光子の探索において実光子測定以上に有効な手段と示された仮想光子測定に着目し、電子・陽電子対の角度分布非対称性により偏光測定を実現した。RHIC 加速器 PHENIX 実験および LHC 加速器 ALICE 実験において、原子核相互衝突からの電子・陽電子対の測定を用いて、直接生成仮想光子の非等方性および偏光の検出測定解析を推進した。また、生成粒子の集団運動において現在まで最も注目されてきたフーリエ展開 2 次成分(楕円流)に加えて 1 次成分(偏向流)にも着目し、反応平面に巨視的回転方向の情報を加えた反応軸を事象毎に測定して衝突幾何を三次元的に決定し、直接生成仮想光子測定との幾何学相関解析により、強度の磁場生成を検証する解析手法を確立した。 また、量子電磁力学に基づく数値計算により、磁場中の光子の真空偏極テンソルを計算し、RHIC 加速器および LHC 加速器のエネルギー領域での原子核衝突反応において期待される直接生成仮想光子の非等方性および偏光度の定量的見積を行い、PHENIX 実験および ALICE 実験における高強度磁場生成の検出実現性を明らかにした。 これらの成果を複数の国際会議および国内学会などで公表し、実験と理論の両面から大きな注目を集めた。圧倒的多数の背景雑音成分の精度よい差引きと系統誤差の抑込みによる物理議論が直近の課題である。
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