研究課題/領域番号 |
23654092
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中村 純 広島大学, 情報メディア教育研究センター, 教授 (30130876)
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キーワード | 場の量子論 / 数値シミュレーション / モンテカルロ / 大規模線形計算 / マルチコア |
研究概要 |
場の量子論は、現代物理学の基礎的な理論で、素粒子、原子核、物性論などで広く使われている。特に格子ゲージ理論は、ゲージ対称性を厳密に保ったまま場の量子論に必須の紫外切断が導入され、数値シミュレーションによる非摂動的解析が可能であり、素粒子論、原子核理論における協力な研究手法となっている。本研究の目的は、これまでに開発して広く使われているLTK(Lattice Tool Kit)を基に、数値シミュレーションの非専門家でも場の量子論の数値的研究が可能な環境を構築して提供することである。 この目的のために、(1) コード全体を整理統合し、利用方法を分かりやすく説明したマニュアルを整備、(2) 最新の場の量子論の数値シミュレーション技法のうち汎用性の高いものを導入する、(3) いろいろな計算環境でコードが利用できるように整備する、の3点を進めて行く。 当該年度では(1) 特殊なものを除き、汎用性の高いものを残し、全体のディレクトリ構造の再検討を行い、(2) これまで2種類のフェルミオンしか含まれていなかったコードを、任意の数のフェルミオンが取り扱えるようにrHMC(有理ハイブリッド・モンテカルロ)アルゴリズムを入れ、また多くの分野で重要になる複素化学ポテンシャルを導入した。特に虚数化学ポテンシャルの場合は、それをトポロジカルな境界条件と読み替えることによりヒッグス系の研究に利用可能である、またこれまでの共役勾配法(CG)に基づく大規模線形計算コードをより高速なbiCGコードに入れ替えた、(3) 広く使われているgfotranで全てのコードが実行可能なように整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、先駆的なマルチコアプロセッサー、CELL/B.E.(セル・ブロードバンド・エンジン)を主なターゲットにする予定であったが、マルチコアプロセッサーは大きな進展をみせ、CELL/B.E.は現在最先端ではなくなっているため、FX10などの最新のマルチコアプロセッサーに対して汎用コードの開発を行うことにした。 新たに取り入れたrHMC、複素化学ポテンシャルコードについて、複数の計算環境で精度、効率を調査する
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今後の研究の推進方策 |
コードの中心部の構造がほぼ固まったので、それに合わせたマニュアルの準備を行う。 最新のマルチコアプロセッサーの動向とその上での効率のよいコードの動向を調査し、実装を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初はマルチコアー計算環境としてCELL/B.E.(セル・ブロードバンド・エンジン)を購入しその上での汎用コードの開発を行う予定であったが、最新のマルチコアの進展と多様な機種が利用可能になってきたことを考慮して今後より普及することの予想される機種を調査し、その上で開発を行う。このために、調査(旅費、専門的知識の提供)、研究室レベルで導入可能なマルチコア環境の購入に昨年度の未使用額と合わせた研究費を使用する。
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