研究課題/領域番号 |
23654094
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川村 静児 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (40301725)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 重力波 / レーザー干渉計 |
研究概要 |
本研究の目的は、第3世代重力波検出器へのブレークスルーとなる可能性を秘めた周期的微小重力干渉計を新たに開発することである。周期的微小重力干渉計とは、テストマスの周期的な自由落下状態を実現して、それをレーザー干渉計で測定し、低周波感度を高めるという、これまでの重力波検出器の常識を覆す、我々が独自に考案した革新的な重力波検出器である。平成23年度には、周期的微小重力干渉計実現のために必要な、3つの新しい技術を開発し、次年度の周期的微小重力干渉計プロトタイプの設計・製作を可能にする。以下、平成23年度の研究実績を各開発技術項目に沿って述べる。(1)自由落下機構に関しては、バッテリー駆動できる汎用の試験筐体を準備中である。現在までに、データロガーや加速度計をバッテリー駆動し、また遠隔操作でこれらのスイッチのon/offを行えることを確認した。また、位置センサーとアクチュエーターの付いた取り付けたリニアガイドを購入した。(2)クランプ・リリース機構に関しては、クランプ・リリースにつかわれるアクチュエータの評価装置の開発を行った。この評価装置は、自由質量を模擬した振り子のおもりを、アクチュエータでクランプかつリリースし、そのときのおもりの動きをフォトセンサで読み取るものである。評価装置全体も防振されているため、おもりの微小な動きも地面振動にうもれず検出できる。現在のところ3um/secまでの初速であれば、統計的な処理も併用することで検出可能となっている。(3)データ取得・処理システムに関しては、テストマスのランダムな初速度をデータ処理によって取り除き、重力波信号やショットノイズ、そしてクランプ・リリースに伴う雑音を含む擬似信号を作り、データ処理を行った。その処理により、重力波に対する感度を計算し、所定の感度がおおむね達成可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に予定されていた、周期的微小重力干渉計実現のために必要な、3つの新しい技術の開発は以下に述べるように、一部の項目を除いておおむね順調に行われた。(1)自由落下機構に関しては、自由落下機構の開発において順調な進展が見られた。ただ、位置センサーとアクチュエーターの付いた取り付けたリニアガイドの確認実験はできなかった。しかし、これに関しては、次年度の周期的微小重力干渉計プロトタイプの調整の際に行う方が効率的であるため問題はない。(2)クランプ・リリース機構に関しては、順調に装置の開発を行い、当初の目標である1um/secのリリース速度に迫る3um/secの実現が達成できた。これは、次年度の周期的微小重力干渉計プロトタイプの設計・製作へ進むためには十分な仕様である。(3)データ取得・処理システムに関しても、順調にシミュレーションを行い、所定の感度がおおむね達成可能であることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には、前年度に得られた技術を集結し、1つのテストマスを用いた周期的微小重力干渉計プロトタイプを製作し、その振る舞いを調べる。最初に、容器中で1個のテストマスを使って周期的微小重力の動作を行わせる。そして、調整を繰り返して自由落下機構とクランプ・リリース機構がうまく連動して動作するかを確認する。特に、干渉計の出力のデータからリリース時のランダムな初速度が目標値以下になっていることを確認する。そして、テストマスの変位を計測し、そこからランダムな初速度の成分を除去し、重力波が含まれるべき信号を取り出し、その雑音特性を評価し、将来の、マイケルソン干渉計を用いた周期的微小重力干渉計プロトタイプの発展へとつなげていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
周期的微小重力干渉計プロトタイプのテストマスとその周辺部の特注品を購入する。また、測定用の計測装置としてオッシロスコープなどの購入を行う。また、得られた成果について国内外の学会・研究会等で発表するための旅費も必要である。
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