超弦理論により核子の集合体やQCDの真空の理解を深めるため、QCDに強い電場を書けた場合の応答について尾t区に研究を行った。QCDはクォークの閉じ込めという物理の解明が究極目標であると言って過言ではなく、原子核や核子多体系の物理も全て、クォーク閉じ込めとの関連が解明を待たれる。物理的なプロセスとして、核子やQCD真空に大きな電場をかけると、クォークの閉じ込め力に打ち勝つだけの大きな電場の場合、クォークが解放されるという現象が生じる。これは、QEDにおけるシュインガー効果と同様の効果であり、QCDシュインガー効果と呼んでも良い。QCDシュインガー効果は閉じ込めを物理的に破壊することで相転移を起こし、閉じ込めの機構解明につながるものである。 最終年度は、前年度までのQCDの超弦理論の応用に依る解明に基づき、強い電場をかけたときの強結合ゲージ理論の応答について研究を行った。結果、いくつかの重要な事実を発見した。第一に、有効作用を直接計算する方法をAdS/CFTにおいて発見し、QCDに似た理論の強い電場中の有効作用の虚部を初めて計算することに成功した。第二に、その虚部が現れうる臨界電場は、閉じ込め力と完全に一致することが確かめられた。第3に、電場が強い場合の有効作用の虚部は、QEDの有効作用の虚部を自動的に含んでいることが示された。第4に、電場を時間変化させながら引加した場合、中途でシステムが熱化し、電流が流れ始めることが分かった。この熱化のタイムスケールは非常に早く、重イオン衝突実験での早い熱化との関連が示唆された。 これらの成果は様々な研究会で発表し、特に超弦理論関係やQCD関係、そして物理理論系の招待講演で成果を報告した。
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