研究課題/領域番号 |
23654097
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
黒田 隆之助 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (70350428)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 超短パルス電子ビーム / チェレンコフ航跡場 / コヒーレント放射 |
研究概要 |
本研究は、Sバンド小型リニアック施設を用いてキロアンペア級のピーク電流値を持つ高輝度・超短パルス電子ビームを生成し、キャピラリーチューブによるテラヘルツ領域コヒーレント・チェレンコフ放射生成を行う。更に、強誘電体(ピエゾ素子等)を用いることで、単色可変の高出力テラヘルツ光源を実証することを目的とする。 本年度は、フォトカソードRF電子銃を電子源にもつ産業技術総合研究所Sバンド小型リニアック施設を用いて、キロアンペア級のピーク電流値を持つ高輝度・超短パルス電子ビーム(エネルギー約40MeV、電荷量1 nC以上、パルス幅500fs以下)を生成し、誘電体キャピラリーチューブを通過させることでテラヘルツ領域のコヒーレント・チェレンコフ放射を生成する実験を行った。最初の放射実験としては誘電率2.1、内径1/8インチ、外径1/16インチのテトラフルオロエチレン(PFA)チューブを用いたところ、進行方向にテラヘルツ光を観測し、ショットキーダイオード検波器によって検出に成功した。スペアナを用いたヘテロダイン検出による0.1THz近傍でのスペクトル測定を試みたが、コヒーレント・シンクロトロン放射との区別が困難であることがわかり、それらを分離するため、偏向電磁石の前に穴あきミラーを導入することとした(次年度導入予定)。また、シミュレーションコードによるコヒーレント・チェレンコフ放射計算を行った。誘電率3.8の石英チューブを仮定し、内径: 200μm、外径: 300μm、長さ1cmに、電荷量 0.75nC、ビーム径 50μm(rms)、電子パルス幅 500fs(rms)の電子ビームを集光させると、0.45THz帯で10μJ以上のコヒーレント・チェレンコフテラヘルツ放射が得られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は震災の影響が大きく、実験装置の復旧に時間がかかり、年度前半は研究が思うように進まなかったが、年度後半には産総研Sバンド小型リニアック施設を用いた超短パルス電子ビーム生成、及び誘電体を用いたテラヘルツ領域のコヒーレント・チェレンコフ放射生成に成功した。しかしながら、明瞭なスペクトル測定には至っておらず、次年度以降に実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、コヒーレント・チェレンコフ放射とシンクロトロン放射との明瞭な区別を行い、マイケルソン干渉法による放射スペクトルの測定を行っていく。具体的には、大面積の穴あき軸外放物面鏡を用いて、電子ビームとの相互作用なく、放射を大気中に取り出す方法をとる。また、誘電体材料としては、石英チューブを主体的に実験を行っていくが、電子ビーム集光精度の向上により、ピエゾチューブやピエゾシートを利用し、誘電率を変化させながらのスペクトル測定を目指していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は震災の影響が大きく、実験装置の復旧に時間がかかり、年度前半は研究が思うように進まなかった。しかしながら、上述したように本研究目的を達成するための数々の重要な知見が得られたため、次年度は加速度的に研究を進めていく予定である。研究費としては、マイケルソン干渉計のためのテラヘルツ・ミラー類や、誘電体材料としてピエゾチューブ等の物品費、及び成果発表旅費等に使用する。
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