研究課題/領域番号 |
23654099
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
上原 洋一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (30184964)
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研究分担者 |
桑原 正史 独立行政法人産業技術総合研究所, 光技術部門, 主任研究員 (60356954)
鈴木 哲 仙台高等専門学校, 情報通信工学科, 教授 (90171230)
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キーワード | 原子位置分解能 / テラヘルツ / 走査トンネル顕微鏡 |
研究概要 |
2年間の本研究計画を実施した結果、THz領域におけるSTM発光計測に成功した。原子レベルにまで収束されたトンネル電子ビームによる発光であるので、原子位置分解能は本手法に備わった特性で有り、課題名に表現された研究目的は達成された。 THz領域は多くの物質の振動領域に該当し、この周波数領域の分光学的研究は材料物性の研究や評価に極めて有用である。しかし、nmレベルの局所領域でTHz分光を行う手段は皆無であった。本研究の目的はTHz領域におけるSTM発光検出の可能性を探索することにあった。 THzよりも2桁程度周波数の高い可視域のSTM発光は原子レベルの位置分解能を有する有用な測定技術として確立されている。nAレベルのトンネル電流で励起された可視発光は光子数計数法により計測され、概ね毎秒数1000カウントかそれ以下の信号として検出される。STM発光は基本的に一種の双極子放射であり、その放射効率は周波数の4乗に比例する。従って、可視域で経験的に知られているSTM発光強度の単純な外挿からはTHz領域でSTM発光を観測することは不可能という結論になる。しかし、予備的な理論計算の結果、表面フォノン・ポラリトン等の素励起を介したSTM発光の効率はTHz領域で劇的に増大し、検出可能レベルに到達できる可能性があることが判っていた。 STM発光は極めて微弱で有り、実験的には発光信号を観測しながら光軸調整を行うことはできない。加えて、THz光は目視できない。このため、検出器(ボロメーター)の仕様策定やレンズ等の光学材料の選択は、完全な光軸調整が可能になるよう、約1年をかけて慎重におこなった。光学材料の制約から超高真空環境での実験はできなかったが、高真空で実験が行えるようにシステムを構築し(2年目)、安定した実験が可能になった。その結果、トンネル電流に比例するTHz発光の観測に成功した。
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