前年度より開発に着手したカシミール力測定装置では微小球を取り付けたカンチレバーと対向極板の間にはたらく力をカンチレバーの微小なたわみとして検出する。光ファイバーを用いたFabry-Perot干渉計によりカンチレバーの変位を10 pmのオーダーで検出することが可能である。Fabry-Perot干渉計の動作点を常に最適な位置に保つために高精度波長可変レーザーを採用している。 光ファイバーとカンチレバーの位置調整を行うためにはXYピエゾステージを用いた。今年度は位置合わせをより簡便に行うため、小型かつ位置読み出し機構を備えたピエゾステージの作製を行った。Stick-and-slip機構を用いることで微小ステップの移動かつ長いストロークを移動できるステージを作製した。エンコーダICを用いることで1 μm以下の位置読み取り分解能を持ったステージを作製した。従来のステージに比べ大きさも半分以下となり、高集積化が可能になった。 これらの装置を組み合わせることでより高い力検出精度を持ったカシミール力検出装置が完成した。金蒸着したポリスチレン球をカンチレバーに取り付けることで実際にカシミール力の検出を試み、微小球と対向電極の間に働く力の距離依存性を測定することに成功した。 また、カシミール力を高い精度で検出するためには測定に最適化されたカンチレバーが必要になる。そのためMEMS技術を用いてカンチレバーを自作することが必要不可欠である。本研究ではシリコン基板の両側からパターンを転写するための両面マスクアライナーを自作した。XYZθステージからなるマスクホルダーと高圧水銀灯を組み合せて、10 μm程度の位置合わせ精度を持った両面露光が可能になった。
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