研究課題/領域番号 |
23654107
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
猪野 隆 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 講師 (10301722)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ヘリウム3偏極 / スピン交換法 / 中性子偏極 |
研究概要 |
本研究では、3He偏極セルの試作とその性能評価が重要である。ヘリウム3核偏極を実現するために、本研究ではスピン交換法を用いている。スピン交換法では、まず円偏光のレーザーによりルビジウムの原子偏極を得る。この原子偏極、すなわちルビジウムの最外殻電子の偏極がヘリウム3原子核に移行して、最終的にヘリウム3核偏極が実現される。高い偏極率を実現するためには、3He偏極セル内を清浄に保ちつつ、高純度のヘリウム3ガス、窒素、ルビジウムを封入する必要があり、そのためには高真空排気システムを含むガス精製装置やルビジウム封入のための仕掛けが必要となる。当該年度は、これら高真空排気システム等を整備した。一方、ヘリウム3偏極率については、NMRないしは中性子ビームの透過率により測定することができる。ヘリウム3偏極率の絶対値評価には中性子ビームが有効であるが、NMRでもヘリウム3偏極率の相対値や変化率などは十分測定することができる。当該年度は、このNMRシステムの開発を進め、このシステムにより必要な測定精度を得られることが確認できた。また、3He偏極セルの性能評価には、ヘリウム3の核偏極率だけではなくルビジウムの偏極率も重要であり、これを測定する装置の技術的検討を進めた。具体的には、ルビジウム雰囲気中におけるレーザーの旋光を測定する必要があり、そのための光学装置や測定精度についてシステム設計に向けた検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
震災復旧とくにJ-PARC施設の震災復旧業務に対応したため、本来計画していた時間を本研究に費やすことができなかった。また、震災により国内の中性子施設がすべて停止し、中性子ビームによるテストができない状況となり、これも研究遅延の原因となった。本研究では、3He偏極セルの試作とその評価がもっとも重要であるが、セル製作に関する情報収集及び試作テストで遅れが生じている。3He偏極セルの性能評価研究については、中性子ビームが使用できない状況のためNMR装置の開発を重点的に進め、これについては予定通りの進展をみている。
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今後の研究の推進方策 |
現状やや遅れている3He偏極セルの試作を重点的に進める計画である。とくに情報収集と3He偏極セル試作に向けたテスト環境の整備を進める。また、3He偏極セルの性能評価に必要なルビジウムの偏極率を測定するシステムのテストないしは開発を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
3He偏極セル試作に向けた材料の調達あるいはセル試作に研究経費を使用する。また、ルビジウムの偏極率測定システム構築のための光学部品や電子部品等調達に使用する。加えて、これらの情報収集や進展状況、そして成果報告における旅費等を使用する。
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