研究課題/領域番号 |
23654109
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 憲彰 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30292311)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 磁性 / 量子臨界点 / 低温 / メタ磁性 / 遍歴電子 |
研究概要 |
相転移温度が絶対零度に落ち込む点を量子相転移点と呼び、特に相転移が臨界点のときは量子臨界点と呼ばれる。一般的な量子相転移点あるいは量子臨界点では量子的な揺らぎが支配的になり、通常の基底状態とは異なる現象が観測される。本研究は、未開拓領域といえる強磁性金属の量子臨界点を圧力と磁場によって誘起し、そこに現れる新奇な量子状態を探索することを目的としている。今年度は、遍歴電子強磁性体の量子臨界点近傍で発現する新奇な物性を明らかにするために、遍歴電子メタ磁性物質であるUCoAlの圧力・磁場下の電気抵抗測定を行い、圧力・磁場・温度相図を作成し、量子臨界点を決定した。これらの研究は国内で注目を集め、京都大学との共同研究に発展した。しかしながら、成果をまとめている最中に他の研究グループから同じ物質の相図が報告され、これが我々の測定結果と食い違っていたことから、原因を探るべく精密な解析を行った。その結果、UCoAlの磁気相図は、当初理論的に予想されていた相図よりも複雑な性質を有している可能性があることがわかってきた。また、常圧下における磁気特性を丹念に調べ、メタ磁性の臨界終点温度近傍における臨界指数の解析を行った。これらの結果を京大グループによる核磁気共鳴から得られた結果と照合し、バルクとミクロでのスピンの振る舞いに違いがみられることがわかった。このことがUCoAlの磁気相図を一見複雑にしている可能性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的としていたUCoAlの圧力・磁場・温度相図は作成できた。一方でより詳細な解析により、はじめに予想していた結果からさらに多彩な結果が期待されることが明らかになってきた。これらを調べるための圧力セルや温度測定システムの準備も整っており、研究は着実に進んでいる。また、本研究をきっかけとしてスピン系の相転移と気体―液体相転移の比較研究といった新しい切り口による研究が生まれつつあり、萌芽研究にふさわしい進展がみられている。
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今後の研究の推進方策 |
量子臨界終点を超えた圧力、磁場の領域を開拓したい。また、これまでわかった領域においても、シンメトリーを破るスピンの転移とシンメトリーは破らないトポロジカル転移であるフェルミ面の転移との関係を明らかにすることが重要であり、この点を追求したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)新たな圧力セルによるより高圧領域の測定:圧力セルをこれまでのサイズより太くし、より高圧での実験を行う。(2)交流帯磁率、ホール効果の実験:スピンの挙動を交流帯磁率で、フェルミ面の変化をホール効果によってとらえ、これらの比較を行う。
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