研究課題
本研究では、軌道を実験的に可視化するための方法論と装置の開発を行う。主として、J-PARCの極端条件下単結晶中性子散乱装置「千手」を立ち上げて実験を行う予定であった。初年度はこの装置の立ち上げを実施する予定であったが、地震の影響で、「千手」立ち上げ開始が一年遅れて、平成24年3月から立ち上げを開始した。装置の建設はそれまでに行われていたが、地震後再建設となり、平成23年秋から順調に建設されて、平成24年3月からは中性子を使用して装置パラメータの調整に入っている。順調に調整のための測定は進んでいるので、数ヶ月後にはテスト実験を開始できる見込みである。このような状況のために、平成23年度としては、軌道を見るための中性子磁気構造解析実験は開始できていない。装置の建設と概要に関しては国際会議での発表があり、そのプロシーディングスも既に刊行された。 一方、放射光施設のフォトンファクトリを使用して、X線回折でYTiO3やYVO3の軌道の観察も開始した。これは、単純に高精度に構造解析すれば軌道が見えて来るであろうという発想に基づいている。そのためには多重反射の回避など、通常の構造解析では考慮されていない高精度の測定が必要となってくる。この実験は平成23年度に一度行った。その結果、Tiのd軌道が見えてきており、結果の再現性や温度変化などの追加実験が必要であるが、可能性は見えだしている。平成24年度には本格的な測定に入る予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究の最終目標は、軌道を実験的に可視化するための方法論と装置の開発である。手法としては、J-PARCの極端条件下単結晶中性子散乱装置「千手」を用いた磁気構造解析から軌道を可視化する方法と、放射光を用いた高精度構造解析から可視化する方法を模索している。初年度はJ-PARCの「千手」の建設が終了してその立ち上げを行う予定であった。また、その後にテスト実験を開始する予定であった。地震の影響で、「千手」立ち上げ開始が一年遅れて、平成24年3月から立ち上げを開始している。立ち上げ開始後は、順調に装置パラメータを決めるための測定が始まったので、予定よりは遅れているが順調に進んでいる。 一方、放射光施設のフォトンファクトリを使用したX線回折による軌道の可視化はもう少し一般的な目的で研究を始めたが、高精度の測定データからYTiO3やYVO3の軌道が見え始めた。まだまだ系統的な誤差の排除が詰め切れていないが、予定外に成果が出ているので、平成24年度は実験の頻度を上げる予定であり、多重反射回避の問題をどのように詰めていけば良いかの見通しが出てきた。
J-PARCの単結晶装置中性子回折装置「千手」の立ち上げを終了して磁気構造解析の本実験に入る。平行して、放射光を使用した精密構造解析で軌道を可視化する。これは、再実験と低温実験を予定している。また、韓国原子力研究所との共同研究により、韓国の中性子散乱装置を使用して実験を行う予定である。そのための解析プログラムの開発が必要であり、これも順調に進んでいるので、平成24年度の早い時期には完成すると思われる。
放射光と中性子実験のための実験管理とデータ整理のための人件費に主として使用する。また、放射光での低温実験のためにヘリウムガスを購入する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Journal of Physics: Conference Series
巻: 340 ページ: 012040(4)
DOI:10.1088/1742-6596/340/1/012040