研究課題/領域番号 |
23654112
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
遠藤 康夫 東北大学, 金属材料研究所, 名誉教授 (00013483)
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研究分担者 |
平賀 晴弘 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90323097)
伊藤 恵司 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (80324713)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 新奇強磁性 / 非並行合成 / メカニカルミリング / 中性子散乱 / 強磁性半導体 |
研究概要 |
現在磁性金属をドープした強磁性半導体はエピタキシャルないしスパッタリングで非平衡的に薄膜を生成し低温で熱処理をして準安定相で創成されている。中性子散乱をツールとして強磁性相互作用の決定を目標にする為にはバルク試料が必須である。バルク強磁性半導体を創成する為に非平衡状態での試料作製をメカニカルミリングを使って結晶育成を試みる。平成23年度は大震災の影響で大幅に計画が遅れ、漸く9月以降に実験研究を再開させたが、測定機器の調整、材料の入手が極端に困難となり結局年度末ギリギリに手元に到着した。その上、現時点においても研究計画の根幹をなす中性子散乱実験の再開の目処が立っていない。このような状況下で次の様な実績が得られている。メカニカルミリング法によってZnTeにCr5%ドープした強磁性半導体の創成法を確立した。さらに試料焼成条件の最適条件を見つけ磁化などの特性を明らかにした。メカニカルミリングをして得られた試料のXPDプロファイルからCrZnTeがメインではあるが僅かにCrTeの混入が観られる試料(No3)と実験誤差範囲内で混入が無い試料が出来た。磁化測定からは両者の明瞭な差は観られない。CrZnTeはZんBlende型結晶で僅かに(最大3%)の格子常数の膨張が観られる。熱処理を施すと予想通り低温(300度)まではZn Blende型の結晶を維持するがこれより高温で熱処理を行うと明らかにZnTeと他の相との相分離が起り、それとともに強磁性磁化の値が激減する。MnOにMnをドープした試料のメカニカルミリングに着手した。MnOの混入が観られるが低温で強磁性を示す化合物を創成出来る可能性を得た。LiZnMnAsの試料創成を試行しているがLiをハンドルする為の環境整備を整える事から始めなければならない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で記述したように初期に予定した研究計画の半分も達成出来なかったが、その中でも幾つかの重要な成果があった事は救いである。(1) Zn Blend型、2-6族、3-5族強磁性半導体の中で2種類の物質が存在すると想われる。中でもドープされた強磁性金属エレメントが母体の化合物中に不均一に入る物質(非平衡状態)と整然と置換される物質(平衡状態)の2種類が存在する。前者は平衡に近づける事は難しく(相分離が進む)、むしろ非平衡状態で強磁性が顕れる。この部類に入るのがCrZnTeである。バルク強磁性成分はCrZn相からではないかという疑問が完全に解決していない。(2) MnドープのGaAsあるいはLiZnAsはむしろ平衡状態の結晶ではあるが、高温から冷やす状態で生成するのは非常に困難で適当な外部条件(低い温度での熱処理)で熱処理する必要がある。バルクで生成する条件の最適化を確立する必要性がある。(3) ZnOにMnOを混入してメカニカルミリングを試行した。MnO(反強磁性)が残る事が確認されたが、磁化過程を観ると5Kで強磁性履歴が観測された。
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今後の研究の推進方策 |
出来るだけ早く中性子散乱実験を行える環境を実現し、CrZnTeの強磁性の起源を明らかにしたい。またメカニカルミリング法がこの研究計画の達成の重要な項目であるので、目標を立てた物質を全てこの合成法で出来る事を確率する。例えば今迄試行した物質の他にLiZnMnAsのミリングと熱処理を行い、新しい試料の調整方法を確立する。合成された試料の原子結晶構造の同定と磁化測定ならびに中性子散乱を初めとするバルク特性の測定をシステマテイックに行う。勿論、偏極中性子による磁気構造解析を行って原子磁化の決定を行うことが決定的な実験手段でありこの研究の最大の目標である。しかし、今の時点で少なくともJRR3原子炉の再稼動が決定されていないので確実にこの目的が達成出来る見込みは立っていない。しかし何時でも実験が出来るように準備を整えておく。JPARCのHRC分光器を使ってBrillouin散乱を行う予定である。この方法に依ってスピン波励起からの共鳴散乱を観る事に依って強磁性相互作用を決める事が出来る。9月迄に粉末試料の準備をして中性子非弾性散乱実験を行い新しい非平衡強磁性半導体を作成して新物質創成の開発方法を確立したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
測定機器の調整、材料の入手が極端に困難となっため、試料作成が遅れていることに加えて、東海村にある原子炉の再開が当初予定より大幅に遅れているいる事により、当初予定していた研究計画が遅延し、研究費を繰り越すことになった。次年度は、今年度繰越した研究費も合わせて、研究を推進する。主な使用計画は以下のとおりである。(1)研究旅費 主として茨城県東海村にあるJPARCでの中性子散乱実験と、遠藤が仙台にある東北大学金属材料研究所に出向いて実験する際の旅費に使われる。(2)金属試薬に要する消耗品(3)研究成果発表の為の参加費用
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