強相関系の電子状態を第一原理から正確に扱うことは困難とされてきた。いわゆるMott絶縁体と呼ばれる種類の電子系に対しては既存の第一原理計算コードでは歯が立たない。多体摂動論に基づいて自己エネルギーのFock交換項に動的な遮蔽効果を取り入れるGW近似は半導体のエネルギーギャップを正確に与えるものの、強相関電子系に対しては無力である。GW近似をベースに2粒子グリーン関数に対するBethe-Salpeter方程式を解いて光吸収スペクトルを求める世界最先端の第一原理計算技術があるが、研究代表者は我が国で初めてこの計算コードを開発し、2電子イオン化エネルギースペクトル、on-site Coulomb energy U、Augerスペクトルの計算にも世界で初めて応用した実績をもつ。本研究では、我々が開発してきたこの全電子混合基底GW+Bethe-Salpeter計算プログラムを自己無撞着に、しかも種々のプラズモンポール近似および射影演算子の方法を用いて計算ができるように改良し、Naクラスターなどで自己無撞着GW近似の計算に成功した。この成果はThe 7th General Meeting of Asian Consortium of Computational Materials Science -Virtual Organization (ACCMS -VO7)(2012年11月仙台)で発表し、研究協力者(D3)の桑原理一氏がBest Poster Presenter Awardを受賞した。さらに、分極関数および自己エネルギーに1次のバーテックス補正を取り込むプログラムの改良を行い、本格的なGWΓプログラムを完成させることに成功した。
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