研究概要 |
超音波を用いた弾性定数測定の実験に必要な超音波発振デバイスは,その厚みによって固有振動数が異なるため,研究対象に応じて様々な圧電デバイスを準備する必要がある。本課題研究では,その中で縦波と横波を区分して発振できる単結晶圧電デバイスの薄厚化に取り組み,反転メサ加工することで高周波化を実現し,実際にラットリングを示すカゴ状化合物に適用し,高精度実験へ導入可能かどうかを検討した。まず,汎用性の高いATカット水晶チップについて反転メサ加工を行い,最薄部5μmを実現しブランク周波数260.0MHzから261.9MHzのチップを製造した。金蒸着による電極作成を経て,実際にカゴ状化合物Ce_3Pd_20Ge_6の測定試料に接着して基本振動数155MHzを発振した。次に,ヘリウム3冷凍機を用いて,弾性定数の温度依存性を極低温の0.4Kまで測定し,ラットリングによる超音波分散現象を観測し,通常低温実験に用いるLiNbO_3の高調波発振による実験結果を再現した。これにより,反転メサ加工により薄厚化した圧電デバイスでの超音波実験が可能であることを示した。他方,LiNbO_3とLiTaO_3のエッチングについては,水晶と同様のプロセスを用いての実用的な加工スピードを維持した薄厚化は困難であった。これらの成果を踏まえ,ナノ微粒子を用いた反転メサ加工の研究開発に取り組んでいる。
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