研究概要 |
平成25年度は、前年度に引き続きTCG3880の試料部をより微細化・集積化したXEN-39393チップ、XEN-39390チップの性能評価を行った。試料部位が小さくなることによって測定に適正な周波数領域が高周波となり10-30Hzでの測定が適正であることが判明した。しかしながら温度差検出部の小型化によって低温領域での熱伝堆感度が減少することがわかり液体ヘリウム温度領域ではTCG3880の方が検出感度という点では、有効であることが判明した。これらのチップを用いて、アクセプター分子であるPd(dmit)2の電荷移動錯体であるEtMe3Sb[Pd(dmit)2]2の交流熱容量を測定し、カチオン部の配向に関連すると思われる熱異常を観測した。磁場下、圧力下の外的環境を制御した条件下でのチップ特性の評価も同時に行い、TCG3880については8T,1K付近までの低温、高磁場下で十分に感度をもっており、k-(BETS)2FeBr4の磁場による影響を評価し、緩和型熱容量測定装置で得られた結果と定性的によく似た挙動を見出した。この系は磁性アニオン上の大きなモーメントをもつスピンの3次元的な相互作用がπ電子を介して発現する。しかし、面内から磁場を平行に引加することによって、磁性アニオンの配列に仕方と関係する低次元的な磁気構造が現れることが明らかになった。一方、圧力下での使用すると媒体の影響でチップの劣化が激しくなるため、圧力媒体としてヘリウム気体を用いたところ、室温付近では安定した周波数変調をかけられることがわかった。
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