研究課題/領域番号 |
23654124
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
冨田 知志 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (90360594)
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研究分担者 |
三俣 千春 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70600542)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | メタマテリアル / ナノ磁性体 / 磁性ナノコンポジット / スピン波共鳴 / ギルバート減衰定数 / LLG方程式 / スピントロニクス |
研究概要 |
スピン波メタマテリアルは、磁性体が持つ磁気共鳴、特にスピン波共鳴を利用し、負の比透磁率を実現するための人工構造物質である。本研究では、周波数制御可能なスピン波メタマテリアルの設計ツールを開発するために、相互作用する磁性ナノ粒子集合体の磁気モーメントが行う歳差運動の、解析的モデルを構築することを第一の目的としている。また、解析的モデルの妥当性・定量性を検証するために、我々が既に構築している数値的モデルで数値計算を行い、相互評価する。更に、検証された解析的モデルを駆使し、スピン波メタマテリアルの物性予測を行い、実際に微細加工技術を用いてスピン波メタマテリアルを作製し、スピン波共鳴を測定し、理論的予言を検証することを最終目的としている。初年度である平成23年度は、相互作用する磁性ナノ粒子集合体からなるスピン波メタマテリアルでの、磁気モーメントの歳差運動モデルの構築を行った。磁気モーメントに対する運動方程式であるLLG方程式は、円運動の振動方程式と等価であることを示すことに成功した。そして、この等価方程式を用いて磁性ナノ粒子系の解析的モデルを構築することができた。更に、このようなスピン波メタマテリアルでは、構造によってギルバート減衰定数の制御が可能になることを明らかにした。このことは「メタマテリアル」という考え方を、磁性体やスピン流など、新たな研究分野へ拡張すると言う意味で、非常に意義深い。これらの成果を、Physical Review B誌に論文発表し("Control of Gilbert damping using magnetic metamaterials", Mitsumata and Tomita, 2011)、また日本磁気学会の学術講演会で口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である平成23年度は、周波数制御可能なスピン波メタマテリアルの設計ツールを開発するために、相互作用する磁性ナノ粒子集合体の磁気モーメントが行う歳差運動の、解析的モデルを構築することを目的として研究を進めた。その結果、相互作用する磁性ナノ粒子集合体からなるスピン波メタマテリアルにおいて、磁気モーメントに対する運動方程式であるLLG方程式は、円運動の振動方程式と等価であることを示すことができた。そして、この等価方程式を用いて磁性ナノ粒子系の解析的モデルを構築することに成功した。更に、このようなスピン波メタマテリアルでは、構造によってギルバート減衰定数の制御が可能になることを明らかにした。このことは「メタマテリアル」という概念を、磁性体やスピン流など、新たな研究分野へ拡張し、統合すると言う点からも意義深い。これらの成果を、Physical Review B誌に論文発表し、日本磁気学会の学術講演会で口頭発表した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成24年度は、これまで構築した磁性ナノ粒子集合体の解析的モデルを用いた計算を行い、スピン波メタマテリアルの設計に利用可能であることの検証作業を行う。具体的には磁性ナノ粒子集合体から得られる負の透磁率の大きさ等について、スピンの歳差運動を直接扱うLLG方程式に基づいた数値計算と、平成23年度に得られた等価方程式に基づいた数値計算が定量的に一致するものであるかを検証する。更に解析的モデルの予言を実証すべく、実験を行う。これまでの解析的モデルを元に試料構造をデザインした磁性金属ナノ構造を、微細加工手段などを用いて作製し、その磁気共鳴を実験的に調べる。これにより、有効透磁率や有効ギルバート減衰定数の制御の実現を目指す。磁性材料のスピンの歳差運動の解析(スピンダイナミクス)は、近年研究が盛んとなっているスピントロニクス分野でも注目されている。本研究は、電磁波に対する比透磁率のみならず、磁化のダイナミクスを決定するギルバート減衰定数など、ナノ磁性体の他の磁気特性の設計においても、見通しの良い理論的手法を提案できることを目指し推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用額が生じた要因は、研究の進捗状況に合わせ、予算執行計画を変更したことに伴うものである。次年度も理論検討、数値計算は、研究代表者と研究分担者が分担して行う。研究打合せのための旅費、大学院生の資料整理に対する謝金を計上している。実験は研究代表者が奈良先端大で行う。その為の物品費を計上している。また研究成果の発表に必要な旅費及びその他経費を計上している。特に旅費は、国際会議での発表を予定しているので、計上している。
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