研究課題/領域番号 |
23654124
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
冨田 知志 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (90360594)
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研究分担者 |
三俣 千春 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70600542)
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キーワード | メタマテリアル / メタ分子 / 強磁性体 / スピン波 / 磁気共鳴 / カイラル構造 / スピン流 / ギルバート減衰係数 |
研究概要 |
平成24年度は、スピン波メタマテリアルでの磁気モーメントの歳差運動モデルの解析計算を行った。具体的には、これまでの解析手法を応用し、スピントルク発振による磁気共鳴状態を記述するランダウ・リフシッツ・ギルバート方程式を、理論的に調べた。そしてスピントルク発振における、巨視的なスピンのギルバート緩和の解析的な方程式を導いた。この式は有効ギルバート緩和定数がスピン流に線形に依存することを示していた。対照的に、スピントルク発振周波数は、注入されたスピン流に影響をうけないことが明らかになった。しかしながら、時間依存で変化するスピン流、例えばスピン流パルス、を使えば、スピントルク発振の周波数を上昇できることを示した。この結果は、メタマテリアルとスピンエレクトロニクスとの融合に向けた第一歩となる。 更にスピン波メタマテリアルの実験も行った。具体的には、強磁性金属のミクロンサイズのカイラル構造を、フォトリソグラフィとリフトオフを用いて作製した。そして膜厚50ナノメートルのコバルト薄膜による、直径50マイクロメートルカイラル構造の作製に成功した。しかしカイラル構造形成の歩留まりが悪かったため、その原因を解明するため、分光学的手法による形成メカニズムの解明を試みた。その後、プロセスの最適化の結果、歩留まりも向上し、安定した作製が可能になった。そしてカイラル構造の時計回り・反時計回りのカイラリティ制御にも成功した。現在、共振器型の電子スピン共鳴を用いて強磁性共鳴の測定を行っている。また数値モデルを構築し、数値シュミレーションも試みている。今後は更に、伝送線路型の強磁性共鳴での「一分子」計測を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スピン波メタマテリアルの磁気モーメントの歳差運動の解析計算は完了した。これに加えて、メタマテリアルとスピンエレクトロニクスとの融合に向けた第一歩も踏み出すことができた。また実験ではスピン波カイラルメタマテリアルの作製、基板固定、カイラリティ制御に成功した。これらの成果から、研究目的の達成に向けて、概ね順調に進展していると言ってよい。今後は、数値計算と共に、共振器型及び伝送線路型の強磁性共鳴を用いてスピン波メタマテリアルでのスピンダイナミクスを明らかにし、構造によるスピンダイナミクスの制御を達成したい。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に、スピン波メタマテリアルを作製し、強磁性共鳴を測定して、磁気ダイナミクスを解明する予定であったが、スピン波メタマテリアル作製の歩留まりが悪かったため、計画を変更し、まずスピン波メタマテリアルの形成メカニズムを、分光学的手法で解明することを試みた。この実験は平成24年度で完了し、プロセスの最適化も相まって、歩留まりも向上し、安定した作製が可能になった。よって平成25年度は、共振器型の電子スピン共鳴に加えて、伝送線路型の強磁性共鳴などの手法を用いて、スピン波メタマテリアルの磁気ダイナミクスを解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
スピン波メタマテリアルの強磁性共鳴の測定を、次年度に集中的に行うこととし、次年度使用額はその経費に充てることとしたい。具体的には、実験の消耗品と実験のため旅費と学生アルバイトの謝金に充てる予定にしている。
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