これまでにEuOの純良な単結晶育成に成功している。静的物性としては、磁化測定から得られたCurie点は69.5Kで、この温度から低温に向かい絶縁体から金属への転移へ伴う急減な伝導率の上昇(=抵抗の減少)が観測され、比熱にもシャープなピークを観測している。これらはこれまでの報告と一致しているが、熱膨張係数において50K付近に異常が観測されており、その原因については未だ解明できていない。そして作成した単結晶においては、非常に大きな(~1cm2)な(100)面の劈開面が得られており、本課題の目的である電界効果のためのFET構造の作成には十分な条件を持っている。その電界効果については、サンプル面としては研磨面と劈開面、電極についても金蒸着や針電極等様々な方法で試行してきたが、現在までのところ劈開面を利用した簡易的な針電極を用いたプローフを用いた方法で、電界効果によるp型の増幅効果を観測することに成功している。但し、イオン液体からの漏電があるために、イオン液体の部分とドレイン・ソース電極を十分に引き離した距離をとっているために、印加した電界に対する増幅効果の効率は30%程度であった。増幅効果の向上のために、劈開時の雰囲気制御等などの劈開方法の様々な試行や、サンプル形状、様々な電極の試行などを行ったが顕著な改善は得られなかった。この試行錯誤にかなりの労力と時間を費やしたこともあり、研究協力者との議論も含めて、最終年度であるが、EuO単結晶劈開面の更に良好な劈開面状態が必要であると結論し、更なる良質な表面を得るための単結晶育成に重点を置いた。そこで、当初は測定系の高度化を予定して微少電流源を購入する予定であったが、単結晶育成のための高周波炉の改良に予算を利用した。現在、この改良によって得られた結晶の評価と電界効果への改善具合の評価を並行して行っており、それまでの結果も含めて学会等で発表する予定である。
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