研究課題/領域番号 |
23654128
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
初貝 安弘 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80218495)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ベリー接続 / 時間反転対称性 / トポロジカル絶縁体 / 量子液体 / クラマース縮退 |
研究概要 |
四元数の時間反転対称な系での意義、特にベリー接続との関係を確立するために、申請者による独自の理論(出版済み)の拡張、ならびに具体的な模型における適用を念頭に置いた理論の整備を行った。 一般に物理系が完全に任意の場合、十分に複雑な系の基底状態間の準位交差は禁止されるので、量子化する位相不変量は自明な値のみをとる。特にパラメター空間の次元が奇の場合に定義されるベリー位相とその高次元の対応物は、一般には量子化せず任意の実数値をとるが、系が時間反転対称性、電子正孔対称性、ZQ対称性等の系の固有の対称性の存在下においては、特殊な値に量子化し得る。これが、我々の量子化ベリー位相に対する一般の視点である。この量子化ベリー位相に対して相の対称性の視点から新たな理解を得るとともにいわゆる短距離もつれ相(Short range entangled phase)としての議論を明確にした。関しては米国サンタバーバラ理論物理学研究所ならびに京都大学理論物理学研究所における研究集会における招待講演において、その成果を公表するとともに、現在その内容を整備し論文を執筆中である。 時間反転対称かつ粒子数が奇な系において生ずるクラマース縮退の下でのベリー接続に関しては、その基礎的な理論を精緻な形に展開するとともに、具体的な模型での適用を念頭に数値計算にも適した形に整備しつつある。 また、バルクエッジ対応との関連を明らかとすべく幾つかの具体的な模型に対して具体的な検討も進め研究最終年度にむけ、具体的な研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
クラマース縮退のある系でのベリー接続に関しての理論の完備に関しては、順調に進展し、具体的な物理系に対して適用可能な形になっている。特に数値計算に適した形の理論も予定外のアイデアが発見され具体的な検討を行っている段階であり、当初の計画をこえた研究の進展状況にある。また、具体的な模型に関する適用に関しても、本研究に適したもので、かつ物理的にも極めて有意義な模型を見いだすことに成功し、この系に対して具体的な検討を行っているところである。この点からみても当初の予定を越えた進展状況にあると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通り、計画した研究を推進し、理論の完成と具体的な模型での有効性の確認を目指すとともに、研究最終年度であることを考え、研究成果の公表を目指し、関連する国際的な研究集会、ワークショップ等において情報公開するとともに論文として広く成果を周知する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は当初の計画どおりクラマース縮退をともなったベリー接続の理論の完成をめざし、その一般論の結果を具体的な物理系の模型に対して適用し、その有効性を明らかとする計画である。そのための数値計算関連の予算ならびに関連研究者との研究交流、国際研究集会出席等の旅費に研究費を支出する予定である。また研究最終年度であることを考え、研究成果の発表等の諸経費にも研究費を使用する計画である。
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