研究概要 |
Dyson による一連の研究以来、四元数(Quaternion) が時間反転対称性を持つ系では本質的に重要であることはよく知られているが、系に固有のクラマース縮退による多重項に対して定義される幾何学的位相(ベリー位相 の拡張)に関する四元数表示を用いたZ2-量子化に対する一般理論を申請者は近年公表した。本研究はこの申請者の新規かつ独創的な芽生え期の発想を理論的に深く追求し, その基礎を確立することを第一の目標とする。本年度はその具体的な例としてSp(1)ゲージ対称性をもつ異方的なパイロクロア系を構築し、その上でのトポロジカルな現象を詳しく解析した。その結果は日本物理学会他、国際会議等で発表するとともに、現在論文執筆中である。また、ベリー位相の一般論の下で、有限形状グラフェンにおいてZ2ベリー位相を用いたボンド秩序変数を構築し、多くの芳香族化合物に対してタイトバインディング近似の下で理論を適用し、局在状態とその再構成の観点から具体的な研究を遂行した。これに関しても日本物理学会でその成果を公表すると共に論文執筆中であり、国際会議等でも発表の予定である。 上述のように時間反転対称な系における四元数的ベリー接続の意義とその有効性は確立しつつあるが、この系におけるエッジ状態の四元数的記述に関しては、現在、理論を構築しつつある段階である。特にトポロジカルに非自明な系において広く成立すると信じられている「バルクエッジ対応」の概念も四元数的手法により時間反転対称な系への拡張できると考えられるが、その具体化の作業を現在行っているところである。 なお、本研究の基礎となるベリー接続を用いたトポロジカル秩序変数の定義とその有効性に関しては日本物理学会誌に解説を執筆すると共に、多くの招待講演を行った。
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