研究課題/領域番号 |
23654133
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤井 久純 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70124873)
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研究分担者 |
小倉 昌子 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30397640)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | トポロジカル不規則 / 第一原理電子状態計算 / KKRグリーン関数法 / CPA法 / フォノン励起 / 電子フォノン散乱 / 国際情報交流ドイツ |
研究概要 |
トポロジカル不規則系のうち「配置平均をとったあとには一つの結晶構造をもつ格子となる場合」については格子点からの不規則のずれをt行列の規則的な配置にマップすることはユニタリー変換によって可能であり、これはCPAを用いてシングルサイト近似のもとでうまく取り扱うことができる。このような場合についての定式化と計算機コードの開発を実施した。また、第一原理計算においてはそれ以外に長距離クーロン相互作用に起因する、マフィンティンポテンシャルの構成過程における問題がある。それらを解決するための一つの定式化を提案した。 アニール系においては、原子の位置は構成原子種をどのように配列したかで完全に決まっているはずであるが、一般に組成だけを与えて、それからトポロジカル不規則性を特徴づける確率的なパラメータを決定することは自明ではない。このための方法について定式化を行った。 比較的単純な応用の一つとして有限温度でフォノン励起が存在する場合の系統的な計算を行ない、フォノン励起による電気伝導の温度変化について系統的な計算を行った。このような有限温度でのフォノン励起を不規則として扱うことについて統計力学的観点から出発し、汎関数積分法および静的近似を適用することによって、その意味を明らかにした。 上記の研究において、準備段階において多くのディスカッションを重ねたルードウィッヒ・マクシミリアン大学エバート教授と意見の交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は原子移動が大きくなく、格子の変形が格子定数のおおむね10%程度の小さい場合について、定式化と計算機コードの開発を進める計画であり、これは達成することができた。計画ではフルポテンシャルKKR法を用いたアプローチを試みる予定であったが、これは大きな原子移動がある場合のフルポテンシャル構成について解決すべき問題があることが明らかになったため、完了していない。計画以上の進展として、有限温度のフォノン励起等の格子の変形をともなう系について、これをトポロジカル不規則として取り扱う方法に関する基礎付けを行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)前年度の研究をさらに推進するとともに、「配置平均をとったあとには結晶構造が消失する場合」について完全な定式化と計算機コードの開発研究を実施する。この場合、トポロジカル不規則性は構造グリーン関数が担う。このような定式化は現在までなされていない。まず「コヒーレント構造グリーン関数」を定義する。コヒーレント構造グリーン関数は配置平均の結果を再現するような構造グリーン関数である。遮蔽変換を利用するアイデアを用いると個々の配置に対応する構造グリーン関数のコヒーレント構造グリーン関数からの揺らぎに対する表現を得ることができる。その表式に対して切断近似を適用することによって、コヒーレント構造グリーン関数をきめる自己無撞着方程式を導出する。これはある種の変分原理をみたしていると考えられ、近似の意味付けを行うこともできる(担当:赤井)。2)開発した方法をモデル系に適用することによってその妥当性を検討する(担当:赤井)。3)問題を洗い出した上で、上述のシナリオを第一原理電子状態計算で実現する計算機コードを開発する(担当:小倉)。4)開発した手法を単純な液体金属に適用し、過去になされた有限系を用いた計算、その他の近似的な方法を用いてなされた計算と比較して、その妥当性を検証する(担当:赤井、小倉)。5)以上の研究に関しては23年度に引き続きルードウィッヒ・マクシミリアン大学(ミュンヘン大学)エバート教授と共同研究を推進するとともに、遮蔽グリーン関数の手法を開発したユーリッヒ研究所(ドイツ)のデダリックス教授と議論を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)意見交換のための国外旅費2)情報収集および研究成果発表のための物理学会およびアメリカ物理学会出席のための国内、国外旅費3)別刷り購入4)計算機クラスタに外部からアクセスするための端末用パソコン購入5)HD等の消耗品購入
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