研究課題/領域番号 |
23654134
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
桂木 洋光 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (30346853)
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研究分担者 |
本庄 春雄 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (00181545)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 粘弾性体 / 衝突 / 画像解析 / 動力学 / 波動伝播 |
研究概要 |
本年度は研究計画に則り,実験系の構築と基礎的な予備実験を主に実施した.鉄球の自由落下による衝突実験系の構築に始まり,高速度カメラによる撮影光学系の検討,応力発光材料による内部応力状態の可視化等について検討を行った.実験系の構築及び基本的な光学系の構築は大きな問題なく達成することが出来たが,応力発光材料による内部応力状態の可視化は現状では技術的に困難であることが確認された.特に応力発光材料の発光量が微弱であるため,今回のような衝突を高速度カメラで撮影するという設定の中では感度の問題から有意なデータを取得することは不可能であった.一方で,偏光撮影の技術を高速度カメラに埋め込み,応力状態を可視化する技術があることも分かったが,これを実現するには高額の機器購入が必要となり,本研究の中で実施するのは現実的ではないと判断した.これらの検討の後,構築した実験系を用いて実際に粘弾性衝突の計測を行った.ターゲットのサンプルとしては単純な粘性流体であるグリセリンや作成が容易な寒天ゲルを用いた.インパクタとしては可視化の都合から白色の鉄球を用いた.得られた高速度カメラ画像から鉄球位置を算出し,それを元に鉄球の位置・速度・加速度データを取得する画像解析技術を確立し,粘弾性衝突による衝突抵抗力モデル等の議論を行った.得られたデータはまだバラツキがやや大きく,十分に定量的な解析までには至ることが出来ていないが,データから粘性成分と弾性成分を抽出する技術的手法の基本は確立した.今後は系統的データ取得と解析,粘弾性衝突抵抗力の物理モデル確立を目指す.また,AE等を用いた実験系の改良にも取り組んでいく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に従い,ゲルを作成して固体弾を衝突させその様子(とくにインパクタの運動学的追跡)を高速度カメラにより撮影する実験系を作成した.画像解析から衝突抵抗力モデルに迫る手法についても開発を行った.一方,ターゲットであるゲルの内部応力状態を可視化するための応力発光は高速撮影をするには微弱であることが分かった.そのため(想定内の事態ではあるが),内部応力の可視化を断念する結果となった.これにより逆にインパクタの運動学的計測から動力学を議論する手法に特化して画像解析技術等を集中的に開発する方向性となった.成果のカバーされるべき全体の範囲は限定されることとなったが,ある方向に特化する形となっている.予備実験を通して方向性を少し転換することになったが,全体的には想定した通りの研究進展となっている.
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今後の研究の推進方策 |
衝突による内部の応力状態を応力発光材料を用いて計測することは感度的に不可能であることがこれまでの予備的実験において確認された.今後は固体弾の高速動画データの画像解析を更に進めて,動力学解析により定量的結果を得ることを当面の目標したい.その中でインパクタの運動学的データから,ターゲット物質(ゲル)の粘性と弾性的成分を(抵抗力をベースとして)分離して取り出す解析法を確立したい.具体的には,フォークトモデル(弾性要素と粘性要素を並列に接続したモデル)のような粘弾性を仮定して応力とひずみもしくはひずみ速度との関係を運動学データの偏微分により導出したい.これらの手法を別の計測手法等とも比較しつつ,衝突粘弾性の理解を深めて,粘弾性体(ターゲット)と固体(インパクタ)との衝突によるレオロジー測定手法の確立を目指したい.それらの技術の確立を当面の目標し,その後にAE等の装置を用いた波動伝播計測にも取り組みたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
実験データの取得および解析を進めることが次年度以降の主要な研究実施項目になるので,まずは実験および解析のために必要な消耗品の購入に予算をあてる計画である.実験実施に必要な特殊な治具や装置の購入,作成等も行うが,大がかりな装置の購入等は予定していない(追加の大型装置の購入等は必要の無い研究課題である).研究データの取得および解析が一段落すると,結果の解釈についての議論や一部成果の学会・研究会等での発表も想定しており,そのための出張旅費等も次年度以降の研究経費の使用計画では大きな項目となる.その他,必要であればアルバイト雇用等によるデータ整理の謝金,論文等出版にかかる費用なども支出していきたいと考えている.
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