今年度は,やや特殊なレオロジー特性を持つ粉体における波動伝播と衝突により誘起される流動特性に特に注目して研究を行った.具体的には,AE(Acoustic Emission)技術を用いてゆっくりと変形する粉体層内部における粒子滑りや再配置イベントを定量的に測定した.AEは微弱弾性波の測定技術である.本研究では,粉体内部での波動挙動の統計性にフォーカスするために,単発の高速衝突ではなくゆっくりとした陥入による低速衝突(変形)挙動の実験を行った.特にルースなソフトマター系における波動特性を調べるために,拘束の小さい(自重と横壁だけで支えられている)系での波動特性に注目した.得られたAEデータは典型的なバースト型であり,多数のAEイベントを測定することが出来た.AEイベントの解析より,AEイベントの規模と継続時間が粉体層を構成する粒子の粒径に強く依存することが明らかになった.また,AEイベントのサイズ頻度分布はベキ分布となることも明らかになり,そのベキ指数も粉体層を構成する粒子の粒径に依存することが分かった.AEのイベント統計は工業材料等の圧縮実験等で多数計測されており,その結果によると,ベキ指数は変形の様式と強く相関していることが知られている.具体的には,変形が脆性破壊的であるとベキ指数は小さくなり,変形が塑性的であればベキ指数が大きくなる.このことと,本研究の成果を比較すると,粒子径が大きい場合はベキ指数が小さくなり,より脆性的であると言え,粒子径が小さい場合はベキ指数が大きくなり,より塑性的な変形を示すということが分かった.また,得られたベキ指数は地震における規模頻度分布であるグーテンベルグリヒター則のそれとも比較され,脆性的である大きな粒子径の場合が,実際の地震と近いことが分かった.
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