研究課題/領域番号 |
23654135
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
石原 正三 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (10290727)
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キーワード | 準結晶 / 無機化合物 / 準周期構造 |
研究概要 |
アキュート菱形6面体中に含まれる2個の黄金4面体の折り紙モデルを制作し、ペンローズ・パターンの折り紙モデル(PPモデル)の示す準周期構造と、実験的に示唆されている合金系準結晶の準周期構造との関連性について、黄金四面体で形成される正20面体に着目して考察し、合金系準結晶相の格子点とPPモデルの格子点が一致する可能性を指摘した。 2012年6月にハンガリーのブタペストで開催された、伝統的建築物に関する国際会議において、原子・分子で構成された建築物としての結晶構造に関する講演を行い、結晶構造の特徴を折り紙モデルを用いて説明するとともに、多種多様な構造物の一例として、PPモデルを用いて準結晶の準周期構造を紹介した。 協力者が制作した、8面体のスケルトン615個(折り紙3,690枚使用)を用いて、携帯可能なPPモデルを新たに制作した。この新たなPPモデルを使用して、PPモデルの板状構造間に8面体で作られる正12面体の構造体を挿入することによって、どのように準周期構造が形成されるかを検討した。この結果、8面体を基本構造とする準周期構造は、板状構造の積み重ね方により、多種・多様な準結晶構造となることが示された。 今後、携帯用のPPモデルを用いて、準周期構造中の8面体中に存在する陽イオンと陰イオンの価数を検討し、可能な化合物の組み合わせを考察するとともに、PPモデルから示唆される無機化合物準結晶の準周期構造について、国際会議等における研究発表を行い、国内外の研究者との間で、積極的に情報交換することを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
8面体を基本構造として、2次元ペンローズ・パターンに対応した準周期構造の立体モデルを制作することは、従来の準結晶研究においては試みられてはいない、全く新しい研究手法であり、ペンローズ・パターンの折り紙モデル(PPモデル)は準結晶研究に新たな道を開くものといえる。 平成24年度の取り組みにより、この新たに提案されたPPモデルが従来の準結晶構造に関す研究成果と矛盾せず、準周期構造を考察するためのより単純、かつ、明快な構造モデルとして利用できることが示唆されている。 また、携帯可能なPPモデルを制作したことにより、具体的なモデルを示しながら、準周期構造に関する議論を行うことができるようになり、今後、準結晶の研究者との活発な議論が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度当初立案した3年間の研究計画に従い、平成25年度の研究活動に取り組む。 また、本研究のこれまでの成果を積極的に公表すとともに、共同研究への参加を国内外に広く呼び掛け、平成25年度中に、無機化合物準結晶の合成に向けた具体的な研究計画を新たに立案して、無機化合物準結晶合成に向けた共同研究グループの形成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、3年間の研究期間の最終年度として、①無理数を含む非化学量論的化合物組成の理論的モデルとして非線形波動のソリトンを導入する可能性の検討、②化合物組成中に鉄の混合原子価を含む化合物組成の探索、③各種化合物の相図中で、ガラス相、あるいは、組成が不明な相の探索を行う。 また、PPモデルに基づく準周期構造に関す研究成果の発表を積極的に行うことを予定している。2013年7月14日から7月19日まで、幕張国際会議場で開催される第12回アジア太平洋国際会議と、2013年9月9日から9月15日まで、ギリシャ・クレタ島で開催される第9回ISIS(International Society for the Interdisciplinary Study of Symmetry): Art and Science国際会議において、本研究の成果の一部を発表することを予定している。なお、国際会議の参加費用とポスター制作、および、作品の運搬費用と出張旅費の経費を確保するため、平成24年度の研究経費の一部を平成25年度に繰り越した。
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