八面体の骨格構造(スケルトン)を基本構造とする、ペンローズパターンの折り紙モデル(PPOモデル)は、ペンローズタイリング(PT)の2次元準周期構造を表現する板状構造を表現するとともに、従来の合金系準結晶の準周期構造とは異なる、無機化合物準結晶の一つの可能な3次元準周期構造を示唆している。 本件研究は、無機化合物準結晶合成への第一歩として、PPOモデルを複数制作し、面と角を共有する八面体のスケルトンが作る板状構造を板面に垂直な方向に積み重ねることによって得られる3次元準周期構造の特徴を明らかにすることを目的として開始された。また、無機化合物の結晶構造のデータベースを検索して、3次元準周期構造の特徴に類似する結晶構造を持つ化合物を抽出し、無機化合物準結晶の可能な化学組成を検討することを目指している。 平成25年度において、3次元PTの幾何学的構造とPPOモデルの関連性を考察するため、3次元PTを構成する2種類の菱面体の一つであるアキュート菱面体と、アキュート菱面体に含まれる黄金四面体と黄金八面体の折り紙モデルを新たに制作した。 最終年度である平成25年度は、新たに制作したポータブルなPPOモデルを活用して、八面体のスケルトンが形成する3次元準周期構造に関するこれまでの成果を国内外において研究発表した。海外においては、9月にギリシャで開催された第9回対称性に関する学際的国際会議、国内においては、9月に開催された京都大学数理解析研究所共同研究「タイル張り力学系とその周辺」の研究会、11月に開催された第76回形の科学シンポジウム、および、平成26年3月に開催された第69回日本物理学会年次大会で研究成果を発表した。 なお、無機化合物準結晶の化学組成に関する検討は、データベースへのアクセス権の問題で制限があり、3年間に亘る文献調査では十分な情報収集ができず、今後の課題となっている。
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