研究課題/領域番号 |
23654140
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
関川 太郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90282607)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 高次高調波 / 位相整合 |
研究概要 |
レーザーの高次高調波を分光光源として利用するために,回折格子を2枚用いてパルス幅を伸ばさずに単一次数を取り出す光学系を開発した。その単位時間あたりの光量は、分子科学研究所のUVSOR-II級(~10^9光子/秒)である。本研究の目標はSPring-8級(~10^11光子/秒)の光量をもつレーザー高調波光源を開発することである。光量を増すために、高次高調波発生において中空ファイバーを用いた位相整合を利用する。 本年度は,まず,所有するチタンサファイアレーザーの増幅を行った.パルスエネルギーは0.8 mJから1.1 mJまで増幅できた.増幅後のビーム形状がTEM00モードに近くなり,真空槽まで伝搬させたときのエネルギー損失が小さくなったのは,予期しない収穫であった.以前は,エネルギー損失のため0.7 mJ程度しか高調波発生に使えなかったが,現在は,1.1mJ全部を使用可能である. このレーザーを用いて,1cmの中空ファイバーに気体クリプトンを満たして高調波を発生する実験を行った。ガスジェットを用いたときの7倍程度の光量で,試料上で1秒間あたり7x10^9光子であった.この光量は,UVSORの光量と同程度である一方,SPring8の光量と比較すると1桁ほど小さい.これらの結果は,位相整合条件を計算により得られた最適条件にちかい条件で得られた. ついで,次数選択を行うスリット位置を動かしながら,次数選択後のパルス幅の計測を行った.その結果,単一次数の21次高調波において最短で11 fsになり,フーリエ限界パルスとなった.これらの成果をまとめ,Optics Express誌に公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現状では,UVSOR級でSPring8級には及んでいない.これは,レーザーのパルス圧縮が最適ないためであると考えている.最近判明したが,パルスエネルギーが増すことにより,レーザーシステム中での非線形効果が変化し,分散が以前と変わっていると思われる.現在,圧縮器の状態に変更を加え,よりよい状態にある.来年度は,この状態で再度光量の測定を行う.
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今後の研究の推進方策 |
現状では,UVSOR級でSPring8級には及んでいない.今後は,まず,レーザー光のパルス圧縮が最適の状態で,再度光量の測定を目指す.それでも光量が増えない場合は,非線形媒質として,非線形性の大きいXeの使用を検討する.Xeはイオン化エネルギーが低いため,位相整合条件をみたす上で必ずしも有利とは限らないが,試す価値はあると考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は,たまたま既存の装置・部品を使用することが可能だったため,本研究での経費の節減を行うことができた.来年度は,物品の購入のために控えていた学会発表を,繰り越した予算を利用して積極的に行う.学会発表を通じて研究成果を社会に還元すると共に,共同研究したに大学院生に研究発表の経験をつませ,新たな教育機会を提供する.
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