本研究以前に、レーザーの高次高調波を分光光源として用いるため、単一次数を取り出す時間遅延補償分光器を開発した。シンクロトロン放射光と同様な波長可変ビームラインである。本研究では、ビームラインの試料上での光量を、SPring8と同程度に増強するため、位相整合を利用して高調波発生の効率を向上させた。2年計画である。 1年目は、本年度は,まず,所有するチタンサファイアレーザーの増幅を行った.パルスエネルギーは0.8 mJから1.1 mJまで増幅できた。増幅後のビーム形状がTEM00モードに近くなり,真空槽まで伝搬させたときのエネルギー損失が小さくなったのは,予期しない収穫であった。以前は,エネルギー損失のため0.7 mJ程度しか高調波発生に使えなかったが、現在は,1.1mJ全部を使用可能である。このレーザーを用いて、1cmの中空ファイバーに気体クリプトンを満たして高調波を発生する実験を行った。ガスジェットを用いたときの7倍程度の光量で,試料上で1秒間あたり7x10^9光子であった.この光量は,UVSORの光量と同程度である一方,SPring8の光量と比較すると1桁ほど小さい。しかし、2枚使用している回折格子のうち一枚を0次光にすると、光量は10倍程度になると期待され、パルス幅が200fs程度であれば光量の面では目的を達成している。ついで,分光器において次数選択を行うスリット位置を動かしながら,次数選択後のパルス幅の計測を行った。その結果,単一次数の21次高調波の場合、最短で11 fsとなる最適なスリット位置を発見することができた。これらの成果をまとめ,Optics Express誌に公表した。 2年目は、高調波の波面のファイバー径依存を測定し、200ミクロンより300ミクロンファイバーからのビーム広がりのほうが小さいことが分かった。原子双極子位相を考慮すると説明できる。
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