研究課題/領域番号 |
23654144
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
岡田 邦宏 上智大学, 理工学部, 准教授 (90311993)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | イオントラップ / クーロン結晶 / 分子イオン / 共同冷却 |
研究概要 |
平成23年度は、より安定なCa+, CaH+混合クーロン結晶の生成・検出法の確立と405 nmレーザーシステムの構築を主に行った。また、冷却イオントラップの設計を併せて行った。CaH+の電子振動遷移分光を行うための405nmレーザーは、既存の外部共振器型794nm半導体レーザーの素子を405nm発振のものに変更して得た。具体的には素子の変更と回折格子の変更である。半導体レーザーの駆動電流、温度、共振器長を調整しながらレーザー光を波長計によってモニターし、405nmの発振条件を得ることができた。一方、Ca+, CaH+混合クーロン結晶の観測を効率的に行うために、CCDカメラによるクーロン結晶の画像観測と、高感度な光電子増倍管によるCa+の蛍光検出を同時に行うことが可能なレンズ系を構築した。具体的にはテレセントリックレンズと半透鏡が付属するレンズ系にライトガイドを組合せる部品を新たに製作し、実験に用いた。このレンズ系の導入により、混合クーロン結晶の生成と分子イオンの永年振動スペクトル測定の時間が大幅に短縮され、実験の効率が格段に向上した。一方、数値計算によれば目的とするCaH+の電子遷移分光による600nm発光強度は非常に弱いことが予想されるが、この同時観測法の導入により、CaH+分光を行う際に実験効率の大幅な改善が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
冷却イオントラップの設計とCaH+の安定な生成・検出法を確立し、CaH+の電子遷移分光に必要となる405nmレーザーシステムを完成させることができたものの、昨年度の予算の執行形態が通常と異なっていたため、冷却イオントラップの製作に必要な冷凍機の購入を断念せざるを得なかったことが主な理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、別途所持している10K冷凍機を利用することで、冷却イオントラップの製作を早急に進める。既にイオントラップ自体の設計は終了しているため、今後、現有の極低温冷凍機をイオントラップに接続することで、年度前半に冷却イオントラップを完成させる予定である。その後、イオントラップを10Kまで冷却し、405 nmレーザーをCa+, CaH+混合クーロン結晶に照射することによってCaH+からのレーザー誘起蛍光(600nm)の観測を行う予定である。得られた蛍光の発光強度と数値計算を比較することにより、本研究の目的である振動回転基底状態の生成割合を決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
冷却イオントラップ製作のための材料費と真空部品、高純度水素ガス等の消耗品購入のために物品費を使用する。また、原子物理国際会議(ICAP2012)への参加を目的として、旅費を計上する。
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