研究課題/領域番号 |
23654145
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
重原 淳孝 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60170867)
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研究分担者 |
敷中 一洋 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00507189)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 液晶高分子 / 置換基密度 |
研究概要 |
本研究は、主鎖の折れ曲がりや絡み合いが無い「剛直主鎖/稠密メソゲン側鎖基」型の新規な一連の高分子液晶を合成し、主鎖/側鎖の構造的要因を独立に変化させ、相変化挙動をはじめとする各種物性との相関原理を明らかにする。これまでは、柔軟主鎖でかつまばらにメソゲン側鎖基を有する構造での検討のみがなされており、主鎖/側鎖の構造的要因と液晶性発現の相関を独立に明らかにする研究は成されてこなかった。これにより、側鎖型高分子液晶の分子設計原理の中で大きく欠如していた一連のblack box部を補い、総合的な知見の完結を図る。得られる「剛直主鎖/稠密メソゲン側鎖基」型高分子液晶は、側鎖液晶メソゲン部の構造を様々に制御できることが期待されるため高分子積層膜等への応用も期待される。本年度は、「剛直主鎖/稠密メソゲン側鎖基」型の一連の高分子液晶を合成する為に、スペーサーをヘキサメチレンとデカメチレンに固定し、シアノビフェノキシないしペンチルシクロヘキシルフェノキシメソゲンの液晶性モノマー・ポリマーの合成とキャラクタリゼーション(液晶相変化の温度特性、重合度分布(分子量分散)測定等)を行った。また上記研究の進捗が良かった為、更に高い分子量の高分子液晶を得るために、ロジウム錯体を用いた置換メチレンの重合についても検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画書に書かれている内容のほぼ全てに当たる内容とそれ以外の内容について、達成できたため研究は当初の計画通り遂行していると言える。達成項目は下記の6点である。(1)枝分かれアルキレン=イソプロピレン,スペーサー=ヘキサメチレンまたはデカメチレン、メソゲン=シアノビフェノキシまたはペンチルシクロヘキシルフェノキシである4種のメソゲン側鎖基原料を合成した。(2)モノイソプロピルフマル酸とのエステル化反応により、メソゲン側鎖基を1個有するフマレートモノマー(mono-Fと略)とノルボルネンジカルボキシレートモノマー(mono-Nと略)を合成した。(3)フマル酸とのエステル化反応により、メソゲン側鎖基を2個有するフマレートモノマー(bis-Fと略)とノルボルネンジカルボキシレートモノマー(bis-Nと略)を合成した。(4)mono-F, bis-Fはラジカル重合により、mono-N, bis-Nは配位アニオン重合により相当するポリマーへ導いた。(5)各ポリマーについて、IR,NMR測定などのキャラクタリゼーションを行った。また液晶相変化の温度特性を偏光顕微鏡観察とDSC測定より求め、液晶相同定の為に小角X線回折測定(XRD)を実施した。(6)ロジウム錯体を用いた置換メチレンの重合を採用し、フマレートモノマーの系に比べ高い分子量の目的高分子液晶を得て、上記(5)の検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
下記10の項目について、研究を行う。(1)メソゲン側鎖基のスペーサー長効果を検討するために、昨年度には着手できなかったm = 3~5, 7~9, 11~14, 16, 18のメソゲン側鎖基原料を必要量合成する。(2)フマル酸とのエステル化反応により相当するbis-Fフマレートモノマーを、同様の手法により相当するbis-Nノルボルネンジカルボキシレートモノマーを合成する。(3)bis-Fはラジカル重合、bis-Nは配位アニオン重合によりポリマーへ導く。(4)各ポリマーの分子量分画を行い、分散度が1.1以下の各種分子量の試料を確保する。またそれぞれの試料についてキャラクタリゼーションを行う。(5)上記(4)で得られた試料について、液晶相変化の温度特性を求め、また必要に応じてXRD測定などを実施する。(6)スペーサー長の異なる2つのメソゲン側鎖基を持つ非対称長bis-Fあるいはbis-Nの合成経路を確立する。(7)bis-Fはラジカル重合、bis-Nは配位アニオン重合によりポリマーへ導く。(8)各ポリマーの分子量分画を行い、分散度が1.1以下の各種分子量の試料を確保する。またそれぞれの試料についてキャラクタリゼーションを行う。(9)上記(8)で得られた試料について、液晶相変化の温度特性を偏光顕微鏡観察とDSC測定より求め、また必要に応じて小角X線回折測定などを実施する。これにより、同一分子内に異なるスペーサー長を持つ高分子液晶において、特定の液晶相の下限転移温度が降下する現象を定量化する。(10)フマレートでは無くロジウム錯体を用いた置換メチレンの重合により得られた高分子液晶について(8)(9)の項目をそれぞれ検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
メソゲン合成/重合用試薬・重合用触媒・その他有機試薬・合成用溶媒類・合成用ガラス器具・分析/分取カラム用ゲル充填材を主に購入する。この他、X線回折装置・NMR装置等の分析機器使用料金、成果発表のための旅費、液晶相観察データ類(サーモグラム、顕微鏡・X線画像データ)の読み取り・整理のためのアルバイト費、研究成果投稿料に充てる。23年度は研究進捗の関係で学会出張が少なく繰越金が生じた。本年度は23年度の結果を元とした研究発表の予定があるのでそちらへ繰越金を充てる予定である。また本年度は研究分担の関係で分担者敷中の使用額がゼロであった。本年度は遠方での各種測定実験を予定している為、それに付随する消耗品/出張費で使用する予定である。
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