2013年度は以下4つの項目を達成した。 (1)スペーサー長の異なる2つのメソゲン側鎖基を持つ非対称bis-Fを、マレイン酸無水物と第一のメソゲン側鎖基原料を反応させて半エステルとし、第二のメソゲン側鎖基原料とエステル化して得た。なお、bis-F合成における、マレエートからフマレートへの塩基触媒異性化反応経路の確立も実施した。 (2)bis-Fをラジカル重合によりポリマーへ導いた。各ポリマーの分子量分画を行い、分散度が1.1以下の各種分子量の試料を確保した。 (4)上記(2)で得られた試料について、液晶相変化の温度特性を偏光顕微鏡観察とDSC測定より求め、XRDなどを実施、液晶相を決定した。結果、対称系では温度依存性 (メソゲンの熱揺らぎに由来する値の低下) が見られたが、非対称系では室温付近から約0.5の値を維持し、温度依存性はほとんど観測されなかった。またX線回折像より、スペーサー長の異なる2つのメソゲン側鎖基を持つモノマーから成るポリ置換メチレンについて周期的な歪みを持つ層構造を確認した。本現象は、ポリ置換メチレンの特徴である剛直主鎖と高い置換基密度に起因しており、異なるスペーサー長により生じる相の不安定性を、昇温に伴う主鎖の運動性の増加によって緩和するため起こると考える。 (5)前年に引き続きロジウム錯体を用いたジアゾ酢酸エステルの重合によるシンジオタクチックポリ置換メチレンの合成を行った。具体的にはフェニルアルキレン側鎖を持つポリ置換メチレンを重合し、液晶としてのキャラクタリゼーションを行った。結果、本ポリマーについて液晶相を確認し、一定長以上の側鎖炭素数でアルキレン側鎖を持つポリマー同様のヘキサゴナルカラムナー相の発現が見られた。アルキレン側鎖が長い場合は低温側で二次元格子構造が確認された。本結果は、側鎖のパッキングに起因して主鎖による格子構造が変化することを示唆する。
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