研究課題/領域番号 |
23654148
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
柄谷 肇 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (10169659)
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キーワード | 生物物理 / 生物発光 / 好気的代謝 / 酸化ストレス / 酸化的リン酸化 / 活性酸素種 / 可視化 / 酵母 |
研究概要 |
好気的呼吸エネルギーに基づいて生産される生物発光挙動は、好気的酸化諸過程と密接に連動している。特に酸化的リン酸化に対するストレス負荷条件において、発光挙動が大きく変化する。逆に発光挙動をいろいろなストレス条件で調べることによって、酸化ストレスの発生並びに緩和メカニズムを考察できるものと考えられる。本年度はH23年度に引き続いて、周期的データの観点から、離散フーリエ解析などに基づいて、酸化ストレス条件において生じる動的な発光パターンを調べた。さらに、酸化ストレスの要となる真核細胞ミトコンドリアにおける活性酸素種の生成消滅の可視化、およびミトコンドリアに対する生物発光能の付与を試みた。真核細胞モデルには酵母を用いた。 用いた発光細菌は、Photobacteriumだけでなく、さらにAliivibrio sifiae Y1を用いた。また説明の一般化を目的としてルシフェラーゼ遺伝子をクローニングしたプラスミド(pETBlue-2-bmFPlux)で形質転換した生物発光大腸菌を用いた。ミトコンドリアの可視化では、A. sifiae Y1由来の黄色蛍光タンパク質(Y1-Yellow)コード遺伝子を用い、シャトルベクター(pYES2/CT)法に基づいて酵母を形質転換した。Y1-Yellowコード遺伝子のN末端にはミトコンドリアシグナル配列を融合した。自家生物発光性ミトコンドリアの作製を目指し、細菌ルシフェラーゼコード遺伝子のpYES2/CTへのクローニングを試みた。 フーリエ解析に基づく発光パターンを考察した結果、発光明滅パターンは発光細菌の集団的な酸化ストレス応答のアウトプットであることが予想された。Y1-Yellowコード遺伝子を活用したミトコンドリアの可視化を成功し、酸化ストレスと密接に関わる活性酸素種の生成消滅およびミトコンドリアのモルフォロジーの可視化を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野生型発光細菌だけでなくだけでなく、発光関連遺伝子組換え大腸菌においても同様な解析を行うことが可能となった。また、酸化ストレスと密接に関わる真核細胞内のミトコンドリアの動態を捉えることも可能とした。特にミトコンドリアの動態については酸化ストレス緩和メカニズムにおいて鍵物質となる活性酸素種の生成消滅の可視化を達成した。 ところが、当初、酸化ストレス緩和メカニズムに関する論文を期間内に作成すことを予定していたが、それを達成することができなかった。理由としてつぎの二つの事項が挙げられる。組換え発光大腸菌の状態がいささか不安定であり、実験に遅れをきたすこととなった。この問題点に関しては培地、大腸菌における発光関連遺伝子の発現条件を検討することによって概ね解決した。また、生細胞酵母ミトコンドリアにルシフェラーゼ反応に基づく生物発光能の付与を達成できなかったことにある。H24年度の研究において、プラスミドベクターpYES2/CTへのルシフェラーゼコード遺伝子のクローニングの基礎検討を済ませていることから、改良を加えることによって、自家生物発光性ミトコンドリアの構築は実現できるものと考えている。 遅延については今後取り戻すことが可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究を取りまとめる上において、一部データを取り直す必要性が年度末に生じた。結果的に論文の作成をH25年度に行うこととなった。 さらに、平成25年度新規に採択された基盤研究に本研究の成果を活かす。具体的には、生細胞ミトコンドリアにおける活性酸素種の量的変動の蛍光可視化法を完成する。さらに、NADHとATPの量的変動に着目した酸化的リン酸化の生物発光可視化法を提案すると共に、活性酸素種の量的変動と酸化的リン酸化活性の可視化を同時に実現できる手法の構築を目指す。また構築する手法に基づき、酸化的リン酸化活性と活性酸素種の量的変動との因果関係、及びそれらがミトコンドリアの挙動に及ぼす効果を分子レベルで解き明かす。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰り越した経費は、H25年度に作成する論文の英文校正経費として使用する。
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