研究概要 |
氷に対する、Parrinello-Rahman-Nose-Hoover-chain(PRNHC)型(結晶セルの変形を自由に許す定温・定圧型のMD法)の経路積分分子動力学(PIMD)シミュレーションのプログラムを、本申請者の作成している既存のコードをもとにチューニングした。これまで水素系に対して使用してきたPIMDのプログラムの分子間力、分子間ポテンシャルの部分をフレキシブルな水モデルであるSPC/F2型(J. Lobaugh and G.A. Voth, J. Chem. Phys. 104, 2056 (1996))に変更したものを作成した。このSPC/F2型水ポテンシャルは、剛体分子ではなく分子自体の変形を水の分子内ポテンシャルで許すことを包含した水分子間相互作用ポテンシャルであり、既に水のPIMD計算で物性のよい再現性を示すことが知られている。PRNHC-PIMDとSPC/F2モデルを用いることによって、水素・酸素原子核を量子化し、分子内自由度を入れながら結晶の変形を自由に許すことになる。このPRNHC型のPIMDには、アルゴリズムとして本申請者のnormal-mode CMDアルゴリズム(K. Kinugawa et al., J. Chem. Phys. 106, 1154 (1997)) を使用した。本研究では計算時間が莫大になるためセントロイド量子ダイナミクス計算は行わず、PIMD(経路積分Monte Carloと同等)によって静的なシミュレーションのテスト計算を行った。
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