研究課題/領域番号 |
23654151
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
杉崎 満 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20360042)
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キーワード | 超解像度顕微鏡 / 光合成 / 超高速現象 / エネルギー問題 / ナノテクノロジー |
研究概要 |
光合成は,地球上に降り注ぐ太陽光エネルギーの実に50%を有効利用する,自然が創造した最高の光エネルギー変換機関である.この初期過程を担うのは,光合成膜中に規則正しく配列した5~10ナノメートルのアンテナ色素蛋白超分子複合体という天然のナノデバイスである.本研究では,通常の光学顕微鏡よりも100倍優れた空間分解能を達成する超解像度顕微分光法により,光合成細菌の光合成膜中に配列した色素蛋白複合体間を励起エネルギーが伝搬していく様子の可視化を実現する.光合成初期過程において光補集アンテナから反応中心への励起エネルギーの流れが「指向性を有するのか,または拡散的なのか?」という根源的な問いに対して回答を与え,高効率励起エネルギー伝達のキーメカニズムを解明することを最終的な目的としている. 本研究においては,装置開発を成功させることが研究課題を達成するために最も重要となる.初年度に引き続き,平成24年度は自作顕微システムを改造を超解像度顕微鏡の最適化を行った.作成した装置の空間分解能を見積もるために,クリムゾン蛍光ビーズを用いて顕微蛍光イメージを取得した.その結果,通常の顕微蛍光配置では空間分解能が約500nm(励起レーザーの波長により制限されている)であったものが,200nm以下にまで向上させることができた.励起としてはDPSSレーザーおよびHeNeレーザー,STED光としてはCWチタンサファイアレーザーを用いた.この構成により,近赤外域を観測できるように最適化を進めている.すなわち,現在は標準試料の観測を中心に行っているが,クロロフィルをはじめとする光合成試料のスペクトル領域にマッチした装置をつくることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度末までに,装置を大まかに完成させ光合成試料の測定に移っていくことを予定していた.しかし,空間分解能の向上や標準試料作製方法の改善などの準備に時間がかかり,光合成試料の測定は,ほとんど手を付けることができていないため,上のような自己評価をした.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画においては,装置の開発と,それを用いた光合成試料の測定を並行して交互に行うとしていたが,さまざまな予備測定を繰り返した結果,装置の安定性を確実にすることの方が先決である,という結論に至り,昨年は装置開発を優先して行うことにした.今後は,研究計画にあるように,光合成系試料を対象とした測定を中心に行う.具体的には,これまで顕微分光やコヒーレント分光を行い成果を上げてきたRba. sphaeroides 2.4.1とRps. acidophila 10050用いる.光合成膜中の周辺アンテナLH2とLH1-RCコア複合体の蛍光波長はそれぞれ異なるため,顕微鏡の光軸上にバンドパスフィルターを置き,それぞれの顕微画像を取得した後に画像合成する.その結果,光合成膜中のLH2とLH1-RCのマッピング完成させる.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画に述べたように,本年度はガルバノスキャナを導入し空間分解能のさらなる向上を目指す.これまでの研究成果を学会,および国際雑誌に発表する.
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