研究課題
桜島昭和火口の噴火活動を対象に、最大9台の低周波マイクロホンを使用した空振アレイ観測を実施した。このアレイ観測の結果、噴煙放出そのものに伴う微弱な空振は0.8Hzあたりにピークを持つことが明らかになり、その放射源は火口位置に推定された。一方、これまで噴煙挙動と関係すると考えられていた、卓越周波数1~2Hzのシグナルは、噴煙放出時以外の時間帯でも散見されることから、火口底下の通路ないしは地形内を、噴煙や火山ガスなどの希薄流体が通過することで形成されるものと考えられる。なお、爆発的噴火の空振シグナルは、その発生直後(10秒程度)以降の時間帯は、姶良カルデラ地形からの回折波や反射波が卓越するため、解析には十分注意しなければならないことも明らかになった。噴煙の局所渦構造の運動解析から、火口部における噴煙噴出速度を推定する方法を構築、ブルカノ式噴火における噴出速度の時間変化を見積もることができた。火山噴煙3次元数値計算を東京大学EIC計算機システム、海洋研究開発機構の地球シミュレータを用いて実施し、種々の初期条件、境界条件に対する噴煙挙動についての検討も行った。噴煙数値計算コードの改良によって、小規模ブルカノ式噴火に対応した数値計算が行えるようになったほか、噴煙の上昇や崩壊過程などに対する火口地形や周囲風環境らが与える影響についても、定量的に明らかにすることができた。また、空振の周波数構造と噴煙放射角度との関係性についても検討を行い、その特徴も明らかにした。以上の研究成果から、より現実を反映した初期・境界条件下で、噴煙挙動を数値的に模擬することが可能になり、火山噴煙の噴出、拡大、上昇過程に伴う空気振動放射過程の詳細を定量的に理解するための下地が整った。当初の研究目的すべてが達成されたとは言えないものの、相応の研究進展があったといえる。
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Bulletin of Volcanological Society of Japan
巻: 58 ページ: 163-181
巻: 58 ページ: 115-135
Earth, Planets and Space
巻: 65 ページ: in press