研究課題/領域番号 |
23654159
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小畑 正明 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20126486)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 地震 / 断層 / シュードタキライト / マントル / オリビン / イタリア / Balmuccia / 衝撃圧縮 |
研究概要 |
衝撃圧縮実験と天然(Balmuccia)の超塩基性シュードタキライトの分析研究において次のような成果があった。(1)衝撃圧縮実験:熊本大学衝撃・極限環境研究センターにて二つの衝撃実験,RUN#5, #6, を行い試料回収にも成功した。RUN#5(飛翔体W;1.04km/s; 20GPa)では天然のかんらん岩(dunite)を用いた。圧縮軸に斜め方向に,互いにほぼ直交する多数の共役剪断面を作ることができた。しかし剪断面は全て粉砕で,融解組織は見られなかった。RUN#6(飛翔体W;1.5km/s; 20GPa)では天然のかんらん石単結晶を用いた。融解を狙って,飛翔体のスピードを約50%上げた結果,圧縮軸に斜交して多数の剪断面が形成し,剪断面によっては,数mmにおよぶ横ずれが認められたものの,やはり剪断面で起こった事は圧倒的に粉砕であった。ただし,部分的には融解,ないしは何らかの化学変化を示唆する微細組織も認められたので,現在透過電子顕微鏡の観察を計画中である。(2)天然の超塩基性シュードタキライトの研究(Balmucciaかんらん岩):変形再結晶したマイロナイトシュードタキライトと明瞭な火成岩組織を有するシュードタキライトに共通して存在するスピネルコロナ組織を見出し詳細に分析した。その結果,この組織はかんらん岩が超高温で溶融した際にスピネルの部分溶融によって生じたものであることが判明した。この発見により,火成岩組織が残っていないため成因的に問題の多かったマイロナイトシュードタキライトも火成岩起源であることが確立できたことの意義は大きい(現時投稿準備中)。その他,Balmucciaかんらん岩において,変形構造の局在化から剪断集中の局在化現象を見出し,それが震源核を表す,という新たな仮説を提案するに至たり,これも現在投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
衝撃圧縮実験では,圧縮したオリビンのサンプルに剪断面を発生させることはできているが,理論的に予測と異なり,剪断面で溶融したという明瞭な徴候がまだつかめていない。これは溶融はしたが,単にその徴候が認識できていないためなのか,それともまだ溶融が起こっていないのか,そのどちらかが不明なためでもある。予測される溶融幅が1ミクロンのオーダーなので高分解能電子顕微鏡を使った注意深い観察が要求されるデリケートなところがある。天然のシュードタキライトの研究は順調に進んでいる。データは蓄積されているので今後の課題はその整理のスキームを確立することである。
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今後の研究の推進方策 |
上にも述べたように,衝撃圧縮実験においては,サンプルに剪断面を発生させることはできているが,まだ明瞭な溶融した徴候をつかめていない。これは溶融は起こったが,その徴候が認定できていないのか,それとも溶融が起こっていないのかどちらか,いまのところ不明である。従って今後の課題は(1)溶融の組織的クライテリアを見出すことと,(2)剪断変位量をコントロールし,確実に剪断面で溶融を起こさせる実験技法の開発である。この目的のためオリビン結晶を使って衝撃圧縮実験を繰り返し行い,条件を変えることで得られる組織変化を観察し,系統的な変化を把握することである。衝撃圧縮実験の手法に比べると,回収サンプルの組織観察の手法開発はこれまでの研究例は限られているため世界的にも遅れている。時間的にも1マイクロ秒という超短時間の現象なので,その物理過程を理論面でも基礎から考察する必要があり,基礎科学としても重要な課題である。 天然のシュードタキライトに関しては,多様な産状のキャラクタリゼーションを継続して行い,観察から得られる計量パラメータと地震発生時のダイナミックパラメータを関連づけるべく理論をさらに展開させることが今後の研究推進方策の一つの柱でもある。平成23年度で残額(43139円)が生じたのは,当初計画していた国内出張(熊本)が,準備の都合上24年度実施に変更したためである。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:150,000円(衝撃圧縮実験,電子顕微鏡関係消耗品)旅費:593,139 (学会にての研究成果発表:地球惑星科学連合(千葉幕張),IGC(Brisbane);実験実施旅費:熊本大学2回,広島大学1回,東京大学2回)人件費・謝金:100,000円(サンプル整理,分析補助)その他(出版費):100,000円(論文投稿ページチャージ,調査時のレンタカー)
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