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2012 年度 実施状況報告書

衝撃圧縮実験による岩石の剪断溶融と深発地震の震源過程メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 23654159
研究機関京都大学

研究代表者

小畑 正明  京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (20126486)

キーワード地震 / 断層 / シュードタキライト / マントル / オリビン / Ivrea Zone / Balmuccia / 衝撃圧縮
研究概要

衝撃圧縮実験と天然の超塩基性シュードタキライト (イタリアBalmuccia) の分析研究において次のような成果があった。
(1)衝撃圧縮実験:昨年度に引き続き,熊本大学衝撃・極限環境研究センターの火薬銃を用いてオリビンの衝撃圧縮実験を行った(RUN#7)。サンプルは昨年と同じオリビン石単結晶を用いた。今回の実験では,昨年よりもよりも変形を局在化させより広汎な溶融を狙ってステップのある飛翔体を新に工夫しそれを用いた。その結果は圧縮軸に斜交して多数の剪断面が形成し,剪断面によっては,数mmにおよぶ大きな横ずれが認められたものの,やはり剪断面で起こった事は圧倒的に粉砕であった。それと並行して、昨年度行った実験RUN#6の回収サンプルについて,特に溶融の可能性のある部分をFIBで切り出し透過型電子顕微鏡観察を行った。その結果,断層面には特徴的な高密度の転位構造の詳細が観察され,また少量ながらレンズ状の非晶質物質が見つかった。現在これが溶融ガラスの凍結したものであるかどうか確認のためより詳細な分析中である。
(2)天然の超塩基性シュードタキライトの研究:変形再結晶したマイロナイトシュードタキライトと明瞭な火成岩組織を有するシュードタキライトに共通して存在するスピネルコロナ組織を詳細に分析した。その結果,この組織はかんらん岩が超高温で溶融した際にスピネルの部分溶融によって生じたものであることが判明した。この発見により,明瞭な火成岩組織が残っていないため成因的に問題の多かった「マイロナイトシュードタキライト」も火成岩起源であることが確立できたことの意義は大きい(現時投稿準備中)。さらに,Balmucciaかんらん岩において,マクロな変形構造の観察から剪断集中領域を見出し,そこが地震発生時の震源核のサイトを表す,という新たな仮説を提案するに至った(投稿準備中)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

衝撃圧縮では,オリビンのサンプルに多数の剪断面を発生させることはできているが,理論的な予想と異なり剪断面で溶融したという明瞭な徴候がまだつかめていない。このために回収サンプルについて髙分解能の透過電子顕微鏡を使って観察を行っており,局所的にレンズ状の非晶質物質が存在する箇所が見つかっている。これが摩擦発熱で溶融してできたメルトの急冷物であるかどうか,確認の作業は継続中である。サンプルの開封作業と薄片作成に時間がかかり,24年度実施予定の衝撃圧縮実験の一部は準備が整わなかったので次年度に持ち越すことになった。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策
上にも述べたように,オリビンの衝撃圧縮実験においては,サンプルに剪断面を発生させることはできているが,まだ明瞭な溶融の徴候はつかめていない。これは溶融は起こったが,その徴候が認定できていないのか,それとも溶融が起こっていないのかどちらか,いまのところ不明である。従って今後の課題は(1)溶融の組織的クライテリアを見出すことと,(2)剪断変位量をコントロールし,確実に剪断面で溶融を起こさせる実験技法の開発である。この目的のためオリビン結晶を使って衝撃圧縮実験を繰り返し行い,条件を変えることで得られる組織変化を観察し,系統的な変化を把握することである。衝撃圧縮実験の手法に比べると,回収サンプルの組織観察の手法開発はこれまでの研究例は限られているため世界的にも遅れている。時間的にも1マイクロ秒という超短時間の現象なので,その物理過程を理論面でも基礎から考察する必要があり,基礎科学としても重要な課題である。
天然のシュードタキライトに関しては,多様な産状のキャラクタリゼーションを継続して行い,観察から得られる計量パラメータと地震発生時のダイナミックパラメータを関連づけるべく理論をさらに展開させることが今後の研究推進方策の一つの柱でもある。平成24年度で残額(230,000円)が生じたのは,当初計画していた衝撃圧縮実験のための国内出張(熊本)が準備の都合上25年度実施に変更しためである。

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究費の使用計画  合計930,000円
物品費:200,000円(衝撃圧縮実験,電子顕微鏡関係消耗品)
旅費:530,000 (学会にての研究成果発表:地球惑星科学連合(千葉幕張),地質学会(筑波),鉱物科学会(仙台),AGU(San Francisco, California); 実験実施旅費:熊本大学2回,広島大学2回)
人件費・謝金:100,000円(サンプル整理,分析補助)
その他(出版費):100,000円(論文投稿ページチャージ,調査時のレンタカー)

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Isochemical breakdown of garnet in orogenic garnet peridotite and its implication to reaction kinetics. Mineralogy and Petrology,2013

    • 著者名/発表者名
      Obata, M., Ozawa, K. Naemura, K. and Miyake, A.
    • 雑誌名

      Mineralogy and Petrology

      巻: - ページ: -

    • DOI

      DOI 10.1007/s00710-012-260-4

    • 査読あり
  • [学会発表] かんらん岩の衝撃圧縮実験:深発地震震源過程解明に向けての試験的研究

    • 著者名/発表者名
      小畑正明
    • 学会等名
      地球惑星科学関連連合大会
    • 発表場所
      国際会議場(千葉幕張)
  • [学会発表] 超マフィックシュードタキライト中に見られるスピネル岩片溶解組織

    • 著者名/発表者名
      上田匡将
    • 学会等名
      日本鉱物科学会2012年年会
    • 発表場所
      京都大学(京都)
  • [学会発表] ざくろ石かんらん岩に見いだされたざくろ石の等化学組成分解によって形成したケリファイト – その2

    • 著者名/発表者名
      小畑正明
    • 学会等名
      日本鉱物科学会2012年年会
    • 発表場所
      京都大学(京都)

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公開日: 2014-07-24  

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