研究課題
本研究は火薬銃を用いたかんらん石(オリビン)単結晶の衝撃圧縮実験によってサンプル内部に剪断面を人工的に発生させ,剪断面付近の微細構造を観察することで急速なスリップに伴って起こった物質変化を調べるものである。これにより深発地震の震源過程の詳細とメカニズムの解明をはかることが目的であった。最終年度の平成25年度は前年度に行った衝撃圧縮実験(飛翔体スピード1.5km/s,封圧約30 GPa)によって得られた回収サンプルについて,走査型に加えて透過電子顕微鏡を用いて詳細な観察を行った。その結果,これまで行った一連の衝撃圧縮実験の中で始めて断層面でオリビンの溶融現象が確認出来た。結晶本体は衝撃圧縮により全域的に塑性変形を示し,微視的には[001]らせん転位が密に発達して複雑にからみあった構造をしている。特に断層面から内側の約5ミクロン~2ミクロン幅のゾーンではオリビンが細粒多結晶体化しており,最外縁部2ミクロン幅ゾーンでは,転位を密に含む,粒径数百ナノメータの丸みを帯びたオリビン微粒子が多数発達し,その粒間をオリビン組成のガラスが充填していることが確認できた。この構造から,オリビン単結晶が塑性変形を受けた直後に多結晶化し粉砕(微粒子化)し,引き続いて部分的に溶融が起こったことが読み取れる。衝撃圧縮によりオリビンの溶融が確認されたのはJeanloz et al(1977)の報告があるが,剪断運動によって生じた溶融が確認されたのは本実験が世界初である。この成果は平成26年4月現在Nature に投稿準備中である。その他,イタリアBalmucciaかんらん岩において,変形再結晶したマイロナイトシュードタキライトと,明瞭な火成岩組織を有するシュードタキライトに共通して存在するスピネルコロナ組織を見出し,この組織はかんらん岩が超高温で溶融した際にスピネルの部分溶融によって生じたものであることを示せた(投稿準備中)。
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Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
巻: 109 ページ: 1-6
Mineralogy and Petrology, 107, 881-895.
巻: 107 ページ: 881-895
10.1007/s00710-012-260-4