研究課題/領域番号 |
23654160
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 順司 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60378536)
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研究分担者 |
鍵 裕之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70233666)
大藤 弘明 愛媛大学, 学内共同利用施設等, 助教 (80403864)
石橋 秀巳 東京大学, 地震研究所, その他 (70456854)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | レオロジー / マントル / 流体包有物 |
研究概要 |
本申請課題では,大型放射光施設も高圧発生装置も用いることなく鉱物流動特性を測定する新手法の開発を目指している.研究作業の中で特に独創的だと思われるのは,加熱によって上昇した流体包有物の内圧を差応力源として利用する点である.流体を包有する鉱物を加熱すると流体圧力が上昇し,鉱物内部に急峻な差応力勾配が発生し,差応力分布に応じた様々な塑性変形機構の発現が予想される.それ故,流体包有物周辺の転位を詳細に観察すれば,様々なマントル鉱物の流動特性を一挙に究明することが可能となるであろう.そのために必要な主な作業は下記の5点であり,平成23年度は予定通り(1)および(2)の課題を滞りなく遂行できた.(1)マントル捕獲岩薄片の作製(2)流体包有物の流体密度の測定(顕微ラマン分光分析)(3)加熱ステージを用いた鉱物の焼き鈍し及び加熱中の鉱物内部の圧力分布測定(4)回収試料中の流体包有物の流体密度の測定(顕微ラマン分光分析)(5)集束イオンビームによる流体包有物周辺の薄膜切り出しおよびTEMによる転位密度測定マントル捕獲岩はドイツ連邦共和国アイフェル地方Meerfelder Maarで採取しさ試料を用いた.平成23年度に行う研究課題として上記以外に予定していた「鉱物の結晶方位測定(EBSD測定装置を使用)」も実施した.平成24年度は加熱装置を整備した上で上記研究課題の(3)および(4)を実施する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度に予定していた研究課題は次の2点である.(1)マントル捕獲岩薄片の作製(2)流体包有物の流体密度の測定(顕微ラマン分光分析)(1)に関してはドイツ連邦共和国アイフェル地方で採取したマントル捕獲岩から40個を選び薄片に加工した.(2)に関しては作成した薄片のうち,流体包有物が多く観察されたものを17枚選び測定を行った.一部は再測定を行い分析値の再現性を確認した.分光分析が円滑に推移するか否かは流体包有物の存在度に依存しているが,用いた試料に予想以上の流体包有物が観察されたため,分光分析を円滑に行うことができた.そのため,次年度に予定している加熱実験の準備として,管状加熱炉を用い,試料焼きなまし実験の条件決定を行った.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,流体包有物を含むマントル捕獲岩試料の焼き鈍し実験に移行する.焼き鈍し実験に際しては酸素雰囲気や温度,加熱時間を厳密に制御せねばならないため,計画では新たに導入する加熱ステージを用いる予定でいる.ただし,加熱ステージの価格が配分額を上回ってしまった場合は管状加熱炉を改良し,加熱ステージと同等の加熱条件が出せるよう工夫する.加熱中の試料の様子を観察できないという点は残念であるが,研究計画を遂行できるよう努める.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,加熱実験が研究作業の主体になるため,主に加熱装置の整備や改良に研究費を使用する.加熱ステージの導入が価格面で困難であると判断できた場合は,既設の管状加熱炉を改造するために研究費を使用することになる.主な改造点としては下記3点があげられる.(1)酸素雰囲気を調整するためのガスの流量制御機構の設置(2)試料の加熱温度を精密に測定するための温度計の導入(3)試料を設置するための容器の導入
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