研究課題/領域番号 |
23654160
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 順司 北海道大学, 総合博物館, 准教授 (60378536)
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研究分担者 |
鍵 裕之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70233666)
大藤 弘明 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (80403864)
石橋 秀巳 静岡大学, 理学部, 講師 (70456854)
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キーワード | 流体包有物 / 高圧実験 |
研究概要 |
本申請課題では,大型放射光施設も高圧発生装置も用いることなく鉱物流動特性を測定する新手法の開発を目指している.研究作業の中で特に独創的だと思われるのは,加熱によって上昇した流体包有物の内圧を差応力源として利用する点である.流体を包有する鉱物を加熱すると流体圧力が上昇し,鉱物内部に急峻な差応力勾配が発生し,差応力分布に応じた様々な塑性変形機構の発現が予想される.それゆえ,流体包有物周辺の転位を詳細に観察すれば,様々なマントル鉱物の流動特性を一挙に究明することが可能となるであろう.そのために必要な主な作業は下記の5点であり,平成24年度は予定通り(3)および(4)の課題を滞りなく遂行できた. (1)マントル捕獲岩薄片の作製(2)流体包有物の流体密度の測定(顕微ラマン分光分析)(3)加熱ステージを用いた鉱物の 焼き鈍し及び加熱中の鉱物内部の圧力分布測定(4)回収試料中の流体包有物の流体密度の測定(顕微ラマン分光分析)(5)集束イオンビームによる流体包有物周辺の薄膜切り出しおよびTEMによる転位密度測定. マントル捕獲岩はドイツ連邦共和国アイフェル地方Meerfelder Maarで採取した試料を用いた.平成25年度は加熱装置を整備した上で上記研究課題の(3)と(4)の継続実施,および(5)を新たに実施し,加熱に伴う流体包有物内圧の上昇によって引き起こされた周囲の鉱物の塑性変形について解析を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者や分担者の異動により研究環境が大きく変わったため,その立て直しに時間をとったが,年度内に予定していた課題は全て実施することができた. 平成24年度に予定していた研究課題は次の3点である.(1)加熱装置の性能実験(2)流体包有物を含む鉱物の加熱実験(3)流体包有物の流体密度測定. (1)に関しては,管状加熱炉の移設に伴い前年度に決定した実験条件が使えなくなった.それゆえ平成24年度に最初に行った作業は必要な加熱性能を取り戻す調整作業であった.様々な工夫を施すことにより,移設前の性能に戻すことができた.(2)と(3)に関しては予定通りそれぞれ2回実施することができた.平成25年度にもそれぞれ2回の実施を計画している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度も流体包有物を含む鉱物の加熱実験と,回収試料の流体密度分析を中心に行う.鉱物試料の加熱により,流体包有物の内圧が上がり,周辺の結晶格子が塑性変形を起こすことが予想される.その歪みは時間をかければかけるほど大きくなるため,より長時間の加熱実験によって流体包有物の流体密度の減少がより明瞭になると予想される.そして,流体包有物周辺の鉱物の透過電子顕微鏡観察により,変形機構を探ることができる.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,加熱実験と分光分析が主要な作業となるため,その消耗品の調達経費が主な使途となる.また,分担者の所属機関において透過電子顕微鏡観察を行うため,代表者の旅費も必要となる.さらに,研究成果に応じて,学会発表や投稿原稿に関わる経費が生じるものと思われる.
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