研究課題/領域番号 |
23654162
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
深尾 良夫 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, チームリーダー (10022708)
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研究分担者 |
杉岡 裕子 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 研究員 (00359184)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 海底観測 / 海底地震学 / 水圧計 / 地震計 |
研究概要 |
今年度は以下の特徴を有する装置を試作した。* センシング: 従来の周波数測定方式の圧力計に比べ、広帯域化、高精度化を図った圧力計(Parosceientific 社製水晶振動式NanoResolution: 8B7000-I-005)を用いる。このセンサーの特長はフィルタリング方法の技術向上により短周期側の分解能が1000倍ほど改善されたものであり、感度は水深にして0.02ミリメートルという微小な圧力変動も逃さず捉えられるものと期待される。サンプリングレートは20Hzに設定した。* レコーディング: 海洋研究開発機構(以下JAMSTEC)がケーブル式海底ネットワーク(DONET)用に独自に開発したレコーダー基盤を使用する。このレコーダーの特長は、複数のセンサーからの出力を同時に記録できる仕様となっており汎用性に富むため、既製品である圧力計の出力(RS232)も直接記録可能なものである。センサーからの出力値とタイムスタンプを記録する。記録媒体はSDメモリーカードを用いた。水晶発振器(MCXO)を装備し、時刻校正のための10秒パルス信号を出力する。全体の消費電力は65mAである。* ハウジング: 海底観測用に広く用いられている17インチの水深6000m仕様のガラス球を使用する。ガラス球からは水中コネクターケーブルを4本出しており、水圧計、レコーダー、トランスポンダー、錘切離し電極に接続される。トランスポンダーは海洋電子製でSIコードを使用する。また完成したシステムを実海域にて試験すべく、4月初旬のJAMSTEC調査船「かいれい」航海にて宮城沖海底に投入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の最大の目的である試作装置を完成させた。ただ昨年の東北沖巨大地震の影響で調査船の運航日程が大幅に変更となり、当初目的の紀伊半島沖への試作機の設置は不可能となった。このため、巨大地震後の海底変動観測を兼ねて試作機を宮城県はるか沖合いの海底に設置すべく予定を変更した。この予定変更により設置が次年度初頭にずれこんだものの成功裏に海底設置を終え回収を待つばかりとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
完成したシステムの実海域(今回は2011年東北沖巨大地震の震源域である宮城県はるか沖)における試験を続行する。装置の設置は4月初旬のJAMSTEC調査船「かいれい」航海にて、回収は7月中旬からの「淡青丸」航海にて実施する。当該海域では、東北大学により圧力観測が数年にわたり実施されており、データの比較検討が可能であるというメリットがある。測器を回収後、記録の解析と東北大学水圧計記録との比較解析を進め、問題点の洗い出しと対応策を明らかにする。その上で別途予算と合わせてもう1機を製作して並行観測によるテストを可能とする。一方で、JAMSTEC海底ネットワークの水圧計と広帯域海底地震計との比較アレー解析を実施して、我々の観測システムの最適配置を考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度は2011東北沖巨大地震に伴う観測計画の変更が発生したため、データロガー購入計画もこれに応じて変更を迫られた。種々検討の結果、既存備品と本研究予算と別途予算とをかき集めて1台ではなく計2台の試作装置を製作し、計画期間中に2台による並行試験観測を可能とすることとした。次年度は1台目の試作機の回収にかかる旅費と、2台目の製作にかかるコストのうちのデータロガー部分の購入に充当する予定である。
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