研究課題/領域番号 |
23654164
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
岩崎 博之 群馬大学, 教育学部, 教授 (70261823)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 積乱雲 / 微細構造 / 短時間降水量 |
研究概要 |
衝突型雨量計で観測される10秒という短い時間間隔の雨量データを利用し,発達した積乱雲の内部構造を推定するために,3台の気象測器(Vaisala社製WXT520)を榛名山山頂に設置し,2011年6月から9月に掛けて連続観測を行った.10秒雨量データによる解析は前例がなく,その精度についての詳しい情報がないため,3台のWXT520を約30cm間隔に直線上に配置し,それぞれの機差を把握することも試みた. 雨量強度が50mm/hrを越え,かつ,30分以上の連続降水が観測された事例(豪雨)を解析対象とした.3台から求めた1時間雨量は,±10%の範囲で一致しているが,10秒間の降水量で比較すると,その変動は非常に大きかった. 周期解析の結果から,多くの豪雨では,2つの周期が認められた.1つの周期は5-10分(空間スケール:~5km)であり,気象庁レーダーとの比較から,これまで知られている対流セルの通過に対応すると考えられた.もう1つは1-2分の周期(空間スケール:~1km)であり,これまで議論されて来なかった積乱雲内部の微細構造に対応すると考えられた.この2つの周期は,3台の雨量計データに共通して認められる.しかし,衝突型雨量計に特有なノイズである可能性を否定できないので,今後,他の観測手法による10秒雨量の観測を実施して,対流セルの通過とは異なる1-2分周期変動の存在を再確認する必要がある. また,10秒雨量の極大値に注目すると,極大値が観測された時刻が雨量計によって異なることがある.1つの連続した降水であっても,前半は極大値の観測される時刻が一致しているのに,後半では20-30秒ずれることもあり,気象測器の時計誤差が原因とは考え難い事例も複数ある.もし,これが事実であるならば,30-60cm離れた地点においても,強雨の空間非一様性が存在することを意味している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年度の研究計画は大別すると,1)榛名山に複数の衝突型雨量計を設置して,連続観測を行える環境を整備し,2)気象庁レーダーデータも参考にしながら10秒雨量の短時間変動をもたらす積乱雲の構造を考察することであった. 1)については,完全に計画を遂行できた.2)に関しても,気象庁レーダーと10秒雨量との比較から,1-2分周期(空間スケール:~1km)の雨量変動は,積乱雲の対流セルとは異なる現象であることが示唆され,更に,数10cmスケールの強雨の空間非一様性も示唆されている.そのため,充分に計画を遂行できたといえる
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今後の研究の推進方策 |
昨年の衝突型雨量計による観測データから,豪雨の短時間雨量の2つの特徴(2つの周期と数10cmスケールの空間非一様性)が明らかになった.しかし,10秒雨量による観測は,これまで類がなかったので,それらの特徴が衝突型雨量計に特有なノイズである可能性を否定することができない.そのため,先ず,2つの周期の存在を検証するために,今年度は,他研究機関から測定原理が全く異なる光学雨量計を借り受けて,衝突型雨量計と同時観測を行う.この2つの測器による10秒降水量の短時間変動の比較を行い,昨年度に得られた豪雨に伴う2つの周期が衝突型雨量計に特有なノイズか否かを明らかにする. また,地域による特徴を調べるために,新しく衝突型雨量計を榛名山の麓の群馬大学と笠取山(山梨県)に設置する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
観測データを解析する過程で,光学雨量計による比較観測が必要であることが分かった.また,榛名山のような孤立峰以外の山岳でも観測を行うべきと考えられた.そのために,平成23年度の経費を残し,平成24年度に新たな観測を行う経費に充てることとした. また,今年度の予算は,論文作成に関わる英文添削や投稿代,気象データ購入や成果報告のための旅費にあてる予定である
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