研究課題/領域番号 |
23654165
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
日比谷 紀之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80192714)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 海洋混合層 / 乱流パラメタリゼーション / 投棄式乱流計 / 投棄式流速計 / Large Eddy Simulation |
研究概要 |
海洋表層混合層内における乱流過程を的確にパラメータ化し海洋大循環モデルや気候モデルに組み込むことは、気候変動の予測向上の上で必要不可欠な課題である。平成23年度は、数ノットで航走中の観測船から海中に投入することで表層下の乱流散逸率を自動計測することのできる投棄式乱流計を用いて、従来の観測では到底捉えることができなかった「荒天時の海洋表層における活発な乱流活動」を直接観測し、「微視的」観点から海洋混合層の発達過程を捉える予定であったが、技術的な問題により、製造元のカナダRockland社での投棄式乱流計の開発が大幅に遅延し、使用することが不可能となった。そこで、平成23年度は、荒天時を想定した強い風応力を海面に与えた時の乱流の発達過程をLarge Eddy Simulation (LES) モデルを用いて数値的に再現するとともに、それを実際の観測結果と等価なものと見なすことによって、従来の混合層乱流モデルを検証・改良を行うことにした。その結果、まず、従来型の乱流パラメタリゼーション (Mellor-Yamadaモデル) を用いた場合には、乱流エネルギーや乱流長さスケールなどの時間的発達がLESの結果と著しく異なってしまい、パラメタリゼーションに組み込まれている乱流スキームに何らかの改良を施す必要性のあることが明らかになった。そこで、すでに大気境界層の時間的発達の再現に成功を収めた方法にならって、この従来型の乱流パラメタリゼーションを改良してみたところ (Mellor-Yamada-Nakanishi-Niino モデル)、乱流エネルギーや乱流長さスケールなどの時間的発達がLESの結果に近づくとともに、海洋混合層内の水温構造もLESの結果とよく一致するなど、非常に良好な結果が得られ、海洋混合層の時間的発達の再現においても、その有効性を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は、荒天時の海洋表層における活発な乱流活動を想定したLarge Eddy Simulation (LES)を行い、その結果から既存の海洋表層混合層モデルの検証とその改良を行うことができた。しかしながら、平成23年度は、このLESモデルによる計算結果の有効性を検証するために、投棄式乱流計による荒天時での乱流観測もあわせて予定していたが、投棄式乱流計の製造元であるカナダ Rockland社での技術開発の大幅な遅延のため、その実行が不可能となってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度に実行できなかった投棄式乱流計による「荒天時の海洋表層における活発な乱流活動」の直接観測に挑戦し、「微視的」観点から海洋混合層の発達過程を捉えるとともに、その観測結果との比較を通じて、Large Eddy Simulation (LES) モデルによる計算結果の有効性の検証を行う。続いて、検証されたLarge Eddy Simulationモデルの結果をリファレンスとして乱流混合スキームのさらなる改良を行い、海洋大循環モデルに組み込むことで海洋混合層の変動メカニズムを3次元的に明らかにする。特に、北太平洋上を通過する台風に対する上層海洋の応答や、冬季の季節風に対する日本海の応答等の数値シミュレーションを行い、その結果を衛星観測データなどと比較することで、新たに開発された海洋混合層モデルのパフォーマンスを検証する。本研究で開発した乱流パラメタリゼーションスキームを導入することにより、海洋物理学において未解決のまま残されてきた表層混合過程の不確定性を解消し、地球温暖化をはじめとする長期気候変動予測の格段の向上に「ミクロ・スケール」から貢献していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で挑戦する「荒天下における海洋混合層の発達過程の観測」は、船舶を停泊させる必要のある通常の測器では到底実行することができない。数ノットで航走中の船舶から海中に投棄するだけで表層下の乱流散逸率を自動計測することのできる投棄式乱流計を使用することで初めて挑戦可能な、きわめて野心的な観測である。製造元であるカナダの Rockland 社での開発が遅れているが、平成24年度のできる限り早い時期の完成を期待して、平成23年度経費を平成24年度に繰り越し、その購入にあてる。また、この観測には、北海道大学水産学部附属練習船「おしょろ丸」を使用する予定であるが、東京から函館 (乗船地) までの交通費、函館での宿泊費、ならびに、乗船期間中における日当/食卓料を3名分計上する。 一方、大気海洋相互作用の場となる表層混合層内における乱流構造をLarge Eddy Simulation を通じて明らかにするために、東京大学・情報基盤センターのスーパーコンピュータSR-11000の使用料を計上する。 野外観測の結果、および、LES計算の結果、大量のデータが発生するが、その解析のために、研究員を雇用する人件費を計上する。また、本研究で得られた荒天下における海洋混合層内の乱流観測結果、および、高解像度 LES計算結果は、本研究のみならず、今後の関連分野の研究にとって大変に貴重なものになると思われるので、データ記憶媒体を購入して保存する。 さらに、平成24年度は、12月にサンフランシスコで開催される予定のアメリカ地球物理学連合学会で成果発表を行うため2名分の外国旅費を計上するとともに、成果を国際誌に公表するため、学会誌投稿料を計上する。
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