研究課題/領域番号 |
23654165
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
日比谷 紀之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80192714)
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キーワード | 海洋混合層 / 乱流クロージャーモデル / 海洋大循環モデル / 海面水温 / 海面熱フラックス / 台風 / 風応力 / アルゴデータ |
研究概要 |
気候変動をはじめとする大気海洋相互作用を考える上で、海面水温や混合層深度の正確な再現は必要不可欠である。本年度は、従来広く使われてきた Mellor-Yamada (以降 M01) の混合層モデルとその改良版である Nakanishi and Niino (以降 NN09) の混合層モデルを海洋大循環モデルに組み込み、夏季における現実的な台風に伴う風応力のデータや、冬季の海面冷却や風応力のデータを与えた時に、両者にどのような差異が生じるかを詳細に調べた。 計算領域としては北太平洋を主な対象とし、水平の計算格子間隔は球面座標上 120°- 160°E、0°- 40°N で 0.1°× 0.1°、その外側で緩やかに増加するものとした。一方、鉛直方向には45レベルとし、その計算格子間隔を海面付近で 5m、深海で 250m と設定した。さらに、海面における境界条件として、気象庁長期再解析プロジェクト JRA-25 による 1.25°間隔・6時間毎の海上風速、海上気温、降水、比湿、下向き短波・長波フラックスを時間・空間方向に線形補間して与えた。 この数値実験の結果、風応力および海面冷却の何れに対しても NN09モデルを用いた場合の方が M01モデルを用いた場合に比べて混合層がより深くまで発達し、それに伴って海面水温がより低下することが示された。また、このときの ARGOデータによる実際の水温鉛直分布は NN09モデルを用いた計算結果と非常によく合致していることが明らかになった。このことは、台風に対する混合層の応答のみならず、冬季の混合層発達という長期間にわたるシミュレーションにおいても NN09モデルが M01モデルより優れたパフォーマンスを発揮することを明瞭に示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画としては、カナダの Rockland 社により開発された投棄式乱流計を用いて、荒天時を含む様々な気象状況下で観測を行い、その観測結果の解析から既存の海洋混合層モデルの改良を行う予定であった。ところが、Rockland 社での技術開発が大幅に遅れてしまった上に、完成した試作品が当初計画通りに作動しないことが判明したため、コンピュータ上に荒天時の状況を含めた様々な気象状況を仮定し、数値実験を通じて海洋混合層モデルの応答を調べることで、モデル内の乱流スキームの改良を行い、その結果を論文にとりまとめることができた。しかしながら、投棄式乱流計の完成をぎりぎりまで待ったこともあり、国際学会での成果発表および国際誌での論文出版を当初の補助事業期間内に行うことが不可能となった。 以上の理由から、補助事業期間を平成25年度に延長申請した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度内にとりまとめた研究成果について、国際学会での成果発表および国際誌での論文出版を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際学会での成果発表に要する旅費および国際誌での論文出版の費用とする。
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