本研究は、セル中(50mL、pH 7緩衝溶液中、30℃)で行ってきた固体電解質型溶存CO2センサに関する研究を水槽中や海洋の水深数m範囲へと展開し、複数・同時計測を試みる事を目的として進めてきた。昨年度までは、予定していたLaF3単結晶(固体電解質)が入手困難になったことから、計画の順序を替えて「センサ素子の形状等の改良」を先に行い、市販のLiイオン伝導性ガラスセラミックスを代替の固体電解質としてこれに補助層を固定した素子の溶存CO2に対する基礎データを収集し、今後の研究にこの素子が使用できることを確認した。 そこで本年度は、まず昨年度に引き続き、本素子の溶存CO2応答の基礎データとして次の2点について緩衝溶液50mL中で検討した。海洋使用を想定した18 ℃程度の低温における応答を調べたところ、これまでの場合(30℃下)とほぼ同様な応答を得た。また、水深により素子の導線長さを調整する必要があるためその方法を検討した。補助層固定化行程を考慮して、従来の方法で作製した素子の導線を補助層固定後に一度切断し、その間に延長分の導線を継ぎ足した。この様に作製した素子の応答波形にもノイズなどは見られず、濃度の対数と起電力の関係もNernst式に従う直線性を示したことから、この様に導線の長さを調節しても応答に問題は無いと分かった。そこで、これらの結果を元に作製した素子を水槽(高さ1 m、約10 L)中の水深5 cm、35 cmにセットして溶存CO2の同時計測を試みた。いずれの位置にセットした素子でも溶存CO2に対する応答を示したが、これまでの結果に比べ応答時間はかなり長くなり、Nernst式に従う濃度依存性の範囲も低濃度側のみと狭くなった。これらの結果は、単にセンサ素子の問題だけではなく、今回用いた水槽が閉鎖系であったことによる影響も考えられるため、今後は水槽内の条件も考慮する必要がある。
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