古典的ランダム歩行ではなく、非古典的ランダム歩行を行う宇宙線(高エネルギー粒子)が衝撃波統計加速を受ける過程を、テスト粒子計算およびフラクタル拡散方程式を用いて解析した。今年度は最終年度であるため、前年度までの計算・解析を継続するとともに、全体の総括を行った。テスト粒子計算については、ベキ型分布に従うランダム変数を生成するルーチンを用いて、レヴィ歩行統計に従う宇宙線の衝撃波統計加速のテスト粒子計算を行った。粒子運動は、停滞と歩行を交互に繰り返すとし、停滞および歩行のそれぞれの時間スケールをベキ則で与え、衝撃波より注入された種粒子群が衝撃波統計加速を受ける過程を解析した。古典拡散に従う宇宙線の場合には、上流・下流ともに宇宙線スペクトルは衝撃波圧縮比のみの関数としてあらわされるが、非古典拡散に従う宇宙線の場合、拡散係数の時間スケール依存性に対応するパラメータに大きく依存する。また、注入された宇宙線の種粒子群が加速を受けて高エネルギーにいたるまでの時間スケールを、このパラメータと衝撃波圧縮比を用いて整理した。フラクタル拡散方程式に、背景流の不連続として衝撃波を導入し、衝撃波からデルタ関数として注入される宇宙線分布関数の時間発展を数値的に求め、さらに宇宙線分布関数の時間定常解を求めた。また、複数の衝撃波が存在する場合の宇宙線分布について、解析的および数値的に解を求めた。これらの結果を総括し、論文として発表するための準備を進めている。
|