研究課題/領域番号 |
23654171
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
竹内 誠 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80273217)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 放射線スペクトル / 砕屑物 / 後背地 |
研究概要 |
後背地と堆積環境が明らかな現河床堆積物の放射線スペクトルを測定するために,変成岩起源のみが堆積する場所と花崗岩起源のみが堆積する場所の探索をおこなった.対象とした河川は愛知県東部の領家帯変成岩と花崗岩がぶんっぷする地帯を集水域とする矢作川である.地質図を参考にし,変成岩を主とする集水域及び花崗岩を主とする集水域の地点付近を調査し,中粒砂が堆積する現河床堆積物の堆積する場所を探索した.このような条件と合致する場所は比較的上流域にあり,中粒砂の堆積する場所は少ないが,数地点にてそのような適当な場所を見いだした.測定器の納入が遅れたため,放射線スペクトルの測定までは至らなかったが,適当な測定点を見いだしたことで,現地測定がスムーズに進行するものと思われる. 周辺の地質からの放射線スペクトルの影響をできるだけ排除し,現河床堆積物の放射線スペクトルのみを測定するため,測定センサーを堆積物中に差し込んで測定することを考案した.そのため,堆積物にセンサーを差し込む穴を現地で容易に掘ることができるように,金属製のハンドコアリング装置を作成した.現地でテストを行った結果,十分に機能することが判明した. また放射線を発生させる鉱物の存在状態を確認するために,偏光顕微鏡観察が複数人で容易にできるように,偏光顕微鏡映像をモニターに表示させる装置を導入した.この相地は当初,予定されていなかったものであるが,砂岩薄片の観察において,事前に協力研究者や実験補助員と観察映像を見ながら検討会を行う上で効率よいものと判断し,導入した.ハイビジョンによる映像は,偏光顕微鏡を直接観察している精度に近く,モニターを等しての観察は詳細な部分までも忠実に再現されており,十分に効果があった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の達成度は当初予定の10%程度に過ぎない.2011年3月11日の東日本大震災の原子力発電所放射能漏れに関係し,本研究の必需品である放射線測定装置の入手が困難になり,その納入は2月上旬になってしまった.年度末の多忙時期になり,研究に十分な時間がとれなかった. 当初予定では,放射線感度のプロファイルが検出器ごとに変わるため,標準試料を用いてキャリブレーションを行う予定であったが,それができなかった.放射線スペクトルの測定もできなかったため,スペクトルの解析もできていない.検出器の納入遅れは致命的な打撃をうけた.
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今後の研究の推進方策 |
2011年度は放射線スペクトルの測定は検出器納入遅れのためできなかったので,2011年度に予定していたキャリブレーション,後背地と堆積環境が明らかな堆積場の堆積物を用いての放射線スペクトルと後背地の地質との関係の検討,そして,放射線スペクトルと鉱物組成,化学組成との関係を明らかにしていく予定である. さらに過去の堆積物の後背地解析に応用するため,濃尾平野周辺の第四系あるいは新第三系を対象として放射線スペクトルの測定を行う.後背地の地質が異なる地点を数点選び,その影響が放射線スペクトルに現れるかどうかを検討する.具体的には花崗岩の影響が大きい東部から北東部と付加体の影響が大きい北部や北西部などの地層を対象としてその相違について検討をする.
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次年度の研究費の使用計画 |
2011年度の野外での放射線スペクトル測定ができなかったため,繰り越し分は2012年度にその分を行う旅費として使用予定である.2012年度は濃尾平野を流れる河川堆積物の測定に数回,協力研究者や実験補助者を伴って実施する.また過去の堆積物として,濃尾平野周辺の地層での測定も行う予定である. また過去の堆積物に対しては,堆積岩の試料を採取し,それに含まれる放射線を放出する鉱物の存在状況を確認するため,岩石薄片を作製したり,鉱物分離を行う.そのため実験補助者の雇用が必要である.
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