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2011 年度 実施状況報告書

化学古生物学の創成

研究課題

研究課題/領域番号 23654176
研究機関東京大学

研究代表者

小宮 剛  東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30361786)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード化学古生物学 / SPring-8 / 化石三次元像解析 / カンブリア紀 / カンブリア爆発 / エディアカラ紀 / 最古後生動物化石 / 後生動物出現
研究概要

従来の古生物学研究は形態を基に行われてきた。その為、現世種が存在する場合は対比も可能であろうが、絶滅種や形が単純な場合は不確定さが残る。また、化石として残らない血液やタンパク質などは研究すらできない。最近の微小領域分析の技術的進歩は目覚ましく、現生生物のナノレベルでの化学組成分析が行われるようになった。また、同位体の分析技術の進歩により、Fe, CaやCu同位体など次世代安定同位体地球化学の研究が急速に進んだ。このように急速に進む分析技術の進歩と生化学の知識を古生物学研究(化石研究)に応用させる研究手法の新規開発という極めて挑戦的な試みが本研究の目標である。私はこれを化学古生物学と命名し、その創成と確立を目指す。 本年度は、掘削試料や露頭試料から化石を採取し、SPring-8の放射光微小トモグラフィー分析を使って、エディアカラ紀の最古動物胚化石やカンブリア紀の微小化石の三次元像を撮像し、その解析を行なった。SPring-8でこの時代の微小化石の三次元像を撮像するのは初の試みである。SPring-8の共同研究者が開発した研究手法を最古動物胚化石に適用し、約50試料の三次元像の撮像に成功した。また、最古の卵を有する節足動物化石の卵の主成分元素分析を行ない、FeOを多く含むことが分かった。今後、その同位体分析などを行なう予定である。 今回の分析により、これまで外観でのみされてきた化石の同定に、化石内部の情報加えることによって、刺胞動物と棘皮動物の胞胚や幼生の区別など、より決定的に化石の生物種同定が可能になることが分かった。そして、初期カンブリア紀にはこれらの動物がより多様に存在していたことが分かった。今回得られた三次元像をもとに適切な切断面を決め、化石の化学分析に繋げる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

Spring-8において、エディアカラ紀やカンブリア紀初期の微小化石の三次元像解析を成功させ、かつ澄江化石の三次元像解析も行なうことができた。得られた微小化石の三次元像は極めて良好で、細部まで詳細に観察することができた。その結果は極めて興味深いもので、実体鏡やSEM観察による外見は前口動物の刺胞動物門と思われる形状を持つが、内部は後口動物の棘皮動物門特有の五角形構造を有すことを示す。このような観察結果は初めてのもので、カンブリア初期の後生動物の多様化の研究に重要な制約条件を与える事ができた。また、最古の卵を持つ節足動物の局所化学分析を行なった。この結果は報告書作成時点では、投稿中であるが、化学古生物研究の先鞭となる。このように多方面で研究が順調に進んでおり、また重要な成果も出ていることことから、当初計画以上に進展していると思われる。

今後の研究の推進方策

微小化石の三次元像解析は極めて有効な研究手法であることが今年度の研究で分かった。このような研究手法は世界の他のグループではまだ系統的に進めていないので、私たちが早急にかつ網羅的に行ない、先導することが重要である。SPring-8は分析機会(時間)の制約上大量試料の分析には向かない。今後は、分析精度は多少劣り、分析時間も非常に長くなってしまう(SPring-8では1試料の分析は15分程度、通常のmicro-CTの場合、1試料4時間程度)が、分析機会を多く得られるmicro-CTを用いて、大量に化石試料の三次元像を解析し、そこから選定した特に重要な200試料程度をSPring-8で解析するように計画する。 本年度は澄江化石の最古の卵を有する節足動物化石の化学分析を行なった、今後さらに澄江化石等の化学分析を進め、化学古生物学を拡げる。また、微小化石の三次元像解析をもとに最適断面を決め、それら微小化石の化学分析を行なう。また、興味深い化石の化学分析を行なうためには、学術的価値の高い化石を採取する必要がある。南中国でより多くの化石採取を続ける。

次年度の研究費の使用計画

純水製造装置などを購入し、化石の化学分析のための設備を充足させる。また、化学分析のための消耗品の購入も必要である。また、化石の三次元像解析をより円滑に進めるためには、有能な三次元像解析用のソフトウェアが必要である。円滑に連絡が取れ、私たちの希望を適切にフィードバックし得るソフトウェア開発会社の選定を行ない、そこで開発したソフトウェアの新規購入をする。また、よりよい化石を得るためには、中国の共同研究者との密な交流が必須であるとともに、現地での試料採取が必要である。それらの旅費に用いる。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2011 その他

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Continental recycling and true continental growth2011

    • 著者名/発表者名
      Komiya, Tsuyoshi
    • 雑誌名

      Russian Geology and Geophysics

      巻: 52 ページ: 1516-1529

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Geochemistry, petrogenesis and geodynamic origin of basalts from the Katun’ accretionary complex of Gorny Altai (southwestern Siberia)2011

    • 著者名/発表者名
      Safonova, Inna Yu.
    • 雑誌名

      Russian Geology and Geophysics

      巻: 52 ページ: 421-442

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A new concept of continental construction in the Central Asian Orogenic Belt (compared to actualistic examples from the Western Pacific)2011

    • 著者名/発表者名
      Safonova, Inna Yu.
    • 雑誌名

      Episodes

      巻: 34 ページ: 186-196

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Geochemical diversity in oceanic basalts hosted by the Zasur'ya accretionary complex, NW Russian Altai, Central Asia: Implications from trace elements and Nd isotopes2011

    • 著者名/発表者名
      Safonova, Inna Yu.
    • 雑誌名

      Journal of Asian Earth Sciences

      巻: 42 ページ: 191-207

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Depth variation of carbon and oxygen isotopes of calcites in Archean altered upper oceanic crust: Implications for the CO2 flux from ocean to oceanic crust in the Archean2011

    • 著者名/発表者名
      Shibuya, T.
    • 雑誌名

      Earth and Planetary Science Letters

      巻: 321-322 ページ: 64-73

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Water content of the mantle xenoliths from Kimberley and implications for explaining textural variations in cratonic root2011

    • 著者名/発表者名
      Katayama, I.
    • 雑誌名

      Geological Journal

      巻: 46 ページ: 173-182

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 四国中央部別子地域三波川帯の超マフィック層状岩体にみられる変形構造:ブーディンおよびデュープレックス様累重2011

    • 著者名/発表者名
      山本啓司
    • 雑誌名

      地質学雑誌

      巻: 117 ページ: VII-VIII

    • 査読あり
  • [学会発表] 冥王代研究計画:最古ジルコンの探索とラブラドル・ネーン岩体の地質調査2011

    • 著者名/発表者名
      小宮剛
    • 学会等名
      2011年日本地球化学会年会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2011 – 914
  • [学会発表] スーパーアースとプレートテクトニクス2011

    • 著者名/発表者名
      小宮剛
    • 学会等名
      2011年日本地質学会
    • 発表場所
      水戸
    • 年月日
      2011 – 911
  • [学会発表] 冥王代研究2011

    • 著者名/発表者名
      小宮剛
    • 学会等名
      2011年日本地質学会
    • 発表場所
      水戸
    • 年月日
      2011 – 911
  • [学会発表] 多細胞動物の三段階進化2011

    • 著者名/発表者名
      小宮剛
    • 学会等名
      2011年地球惑星科学連合大会(招待講演)
    • 発表場所
      幕張
    • 年月日
      2011 – 524
  • [学会発表] 真の大陸成長2011

    • 著者名/発表者名
      小宮剛
    • 学会等名
      2011年地球惑星科学連合大会
    • 発表場所
      幕張
    • 年月日
      2011 – 524
  • [備考]

    • URL

      http://ea.c.u-tokyo.ac.jp/earth/Members/komiya.html

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公開日: 2013-07-10  

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